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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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紅城の赤い時間(11)

 広い紅城の中は、悠真も秋幸も端々まで知っているわけではない。そもそも、広い紅城の中に何があるのか、悠真はすべてを知らない。紅でさえも把握していないのではないかと思うほど、紅城は広いのだ。


紅城で働く人は多く、もしかしたらすれ違うことさえない人もいるかもしれない。その中で、柴のいる場所まで迷うことなく足を進めることが出来るのは、悠真よりも確かな目を持った秋幸が、柴から放たれる大きな色を見ているからだ。


「秋幸は、こんなに離れていても、いつも色が見えるのか?」


一色を見ることが不完全な悠真は、秋幸に尋ねた。すると秋幸は笑った。


「そんなことないよ。俺は、一色が見えるようになって日が浅いからね。もし、全ての一色が離れたところから見えるのなら、世界はとても色で騒がしいことだろうね。柴の一色があの距離でも見えたのは、柴が加工しているからだと思うよ。加工という技術は、火の国独自の技術で、その詳細は知らされていない。知ったところで真似できないんだろうね。もしくは、紅の石以外に適応できないのかもしれない。加工とは、神秘的なものだからね」


秋幸は足早に進んでいた。


宵も深まり、紅城は静まり返っていた。


紅城勤務の術士の大半が都に家を構えている。野江たちのように紅城内部に官邸を持っているのは、稀だということだ。当直をしている者は、朱護が殆どで、その他は残業といったところだろうか。働き者の火の国の民は、術士であろうとなかろうと、働くことに不平を漏らさない。特に、術士でない者が紅城で働くということは、とても偉大で名誉なこととされるからだ。静かな紅城の中を、浴衣姿の悠真と秋幸は先へ進んだ。


丁寧に掃除された外廊下は、月明かりでも反射して輝く。


裸足の足は、ぺたぺたと足音を立てる。紅城の中は、赤い色が満ちていて、心地よい。火の国は赤が高貴とされ、ここには赤の色神がいる。貴重な赤で塗られた柱は、紅城により高貴な雰囲気を与える。


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