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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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紅城の赤い時間(10)

 秋幸は手を後ろにつき、夜空を見上げて答えた


「なんでなのかな。本当は、色の力を暴走させて忠藤に助けられたことも、一色が見えるようになったことも隠しておくつもりだったんだけど。俺自身が困惑しているよ。もしかしたら、野江が秘密を口にしたからかもしれないし、悠真の無色の色を見て話したくなったのかもしれない。俺は自分の行動の理由が分からないよ」


気安く接しやすい秋幸のことが、悠真は計り知れなくなった。それでも、秋幸の一色を見ていると心地よく思えたのだ。平凡だからこそ、温かい。紅と対照的な色のように思えた。紅は鮮烈だからこそ、惹かれるから。


 なぜ、突然秋幸に一色が見えるようになったのか、なぜ秋幸は過去に色の力を暴走させたのか、悠真にはその理由が分からない。ただ、日増しに秋幸の一色が深い色に変じているのは理解できた。一色を見る力が不十分な悠真でも分かるのだ。柴や紅、黒の色神たちはさらに鮮明に見ているだろう。


――秋幸の色が変じている。


だから、紅は黒の色神との戦いの時に官府へ向かうときに、秋幸と義藤を同行人に選んだのかもしれない。だから今日、柴は秋幸を連れて行ったのかもしれない。全ては想像の域を出ない。


「悠真、柴のところへ行かないか?」


秋幸は夜空の先を指差していた。悠真もそちらを見た。すると、夜空の向こうに大きさのある赤が様々に変じていた。何をしているのか、悠真は分からなかった。


「――紅の石の加工」


唐突に口にした秋幸を悠真が見つめた。すると、秋幸は目を細めて続けた。


「俺は加工をどのようにしているのか見たことが無いんだ。単純な興味だけれども、どうせ眠れない夜だ。行ってみないか?」


まるで、悪戯をする子供のように笑う秋幸を見ると、秋幸が同世代の仲間だということを悠真に伝えた。それが、嬉しく思えたのだ。秋幸は悠真の返事を聞かずして、外廊下に立ちあがった。生ぬるい風が頬を撫で、裸足の秋幸がぺたぺたと足音を立てて、二、三歩前へ進んだ。


「行かないのか?」


秋幸が悠真に手を差し出した。悠真はその手を取って立ち上がった。平凡そうで、周囲の動きを良く見ている秋幸が、柴の加工を覗きに行こうとすることが信じられなかった。今の秋幸は、平凡さとかけ離れている。どこか、秋幸に負けたような気がして、悠馬は悔しかった。


「もちろん、行くさ」


悠真は秋幸の後を追った。


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