紅城の赤い時間(7)
秋幸はさらに苦笑した。
「悠真、俺はね、良く言えば期待されている。言い方を変えれば監視されているんだよ。柴も口にしてい
たから間違いないだろうね。柴が俺に警戒をした。だから、紅も俺に警戒をしているのかもしれない」
秋幸は何事もないように、箸を手に取り卵焼きを口に入れた。悠真は一時、何も言うことが出来なかった。理解できなかったのだ。
「監視されている?」
問うのが必死だ。
「俺はね、幼い頃死にかけたことがある。悠真には言ったと思うけれど、事故にあって忠藤に助けられたって。本当は、色の石を暴走させて、死にかけたのを忠藤が助けてくれたんだ。最初は、俺にはそれだけの才があるのかと思ったさ。抑える力を知らない力は、危険だから俺は必死に鍛錬を積んだ。でも、今じゃ違うと思っているんだ。俺が紅の石の力を暴走させて、俺自身が暴走したのは何かの意味がある。俺は紅城に来て、変わる自分を感じているんだ。紅の近くにいて、変わる自分を感じている。紅は俺に警戒をしている。だから、俺を近くに置きたいのかもしれない。こうやって、悠真を任せているのは、俺は悠真の護衛なのか、悠真が俺の監視人なのか分からない」
秋幸の目はまっすぐで、偽りがあるように思えなかった。悠真の知らないところで秋幸は物事を考えている。秋幸は悠真よりも遥かに賢いのだ。その秋幸の考えを否定するだけの材料が悠真にはない。答えが分からない。
「……そんなはずは」
悠真は必死に否定しようとした。だが、うまい言葉は出てこない。
「本当のところは分からないよ。何となく、そんな気がするんだ。でも、どこかで否定していたいかな。俺は期待されて紅の近くにいるんだとね」
秋幸は笑った。