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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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紅城の赤い時間(6)

 秋幸は人の好きそうな笑顔を見せて話した。

「ごめんな、悠真。止めるつもりはなかったんだけれどもね。――悠真、俺は今日の紅を見て安心したよ。俺は紅という人を知ってからずっと心配していたことがあるんだ。紅はとても危なっかしい。それは、紅が活動的だとか、そんなことじゃないんだ。俺たちは紅対して許されないことをした。下村登一に利用されていたとはいえ、俺たちは悠真の故郷を滅ぼし多くの人の命を奪った。そして、紅城を襲撃して義藤を傷つけ攫い、もしかしたらその刃は紅に届いていたかもしれない。紅は俺たちの真意を知って、俺たちの罪を許してくれた。許し、その上で重用までしてくれた。――それが、危なっかしいんだ。本当は、許しちゃいけないんだ。紅は色神で、火の国の頂点に立つ。術士を統括する立場だ。だから紅は、仲良しこよしだけで仲間を選んではいけない。仲の良い人だけを重用するなんてこと、紅には許されない。誤った重用は軋轢を生み、いずれ瓦解する。紅は重用する人を選ばなくちゃいけない。実力、人柄、資質、忠誠心、それら全てを把握して誰を重用するか選ばなくちゃいけない。紅は選んだんだよ。紅の近くにいて腹心となる存在、そして紅を補佐する存在。知るべき情報は立場によって違う。紅は選んだ。春市と千夏は、紅を補佐する立場だ。――俺は、紅が好きこのみだけで人を信頼したり、近くに置いたりしないことに安心したんだよ。あの場に春市と千夏は不適合だ。紅の仲間の真意を探る場。あそこに相応しいのは、紅、義藤、遠次、野江、柴、クロウだ」

秋幸は平然と語る。悠真はその意味をなかなか理解できなかった。だが、饒舌に語る秋幸の一つの矛盾を悠真は見つけた。

「でも、あの場には俺も秋幸もいた」

悠真の指摘に秋幸は苦笑した。

「そうだな。俺たちもいた。きっと、紅は悠真に興味があるんだよ。悠真も俺にそこまで探って欲しくないだろ。色の力を収束させたり、他人の色の石を使ったり、紅が気に掛けるのも理解できる。色の石の力を収束させるのは、赤丸と同じだが、その理由までは探らないさ」

悠真は心臓を掴まれたような気がした。悠真には無色がついている。紅が悠真を気に掛けるのは、悠真を選らんだ無色のためだ。悠真が他の色に食われれば、無色も他の色に食われるから。それは、色の世界の情勢に携わることだから、赤も悠真を気に掛ける。悠真の価値は無色の価値で、無色の価値は悠真の価値なのだから。悠真の秘密に勘付きながらも、秋幸は探らないと言った。それがとても優しいことのように思えるのが不思議だ。

「でも、秋幸も一緒にいただろ」

悠真は秋幸に尋ねた。悠真自身が呼ばれる理由は分かる。だが、秋幸は何だというのだ。秋幸はその理由さえも考えているというのだろうか。


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