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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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紅城の赤い時間(5)

秋幸は悠真が思っていたことを理解してくれていない。紅が春市と千夏の二人と距離を取っているのは事実なのに、秋幸は何も気にしていない。

「なんで、紅は春市と千夏に話を聞かせなかったんだ?差をつけているんだよ。俺は、それが納得できない」

悠真は思いの丈を秋幸に言って、茶碗を持つとご飯を口に頬張った。不思議だが、物を食べていると不安な気持ちが落ち着くのだ。

「俺は違ったよ」

悠真が食べ物を頬張っていると、落ち着き払った秋幸が悠真に言った。悠真は秋幸を見て「まただ」と思った。秋幸の平凡さの先に見せる奥深さ。思慮深さ。秋幸にはかなわないと思い知らされる。あの時の、下村登一に囚われた時と同じだ。他者の一色に合わせて加工された石を使用することで生じる代償を知りながら、秋幸は他人の石を使用した。あの時の秋幸が悠真の脳裏に浮かんだ。悠真が思いもしないことを考えている秋幸の目だ。

「違うってなにが?」

悠真は秋幸に尋ねた。紅が春市と千夏に対して、他の仲間と差をつけていることは事実だ。なのに、なぜ違うと思うのか。秋幸は何も言わない。

「なあ、秋幸。何が違うんだよ」

悠真が詰め寄ると、秋幸は心底困惑したように眉をひそめて、そして口を開いた。

「いや、言っていいのかなって思って」

秋幸は、悠真の思いつかないことを考えている。

「だから、秋幸。何が違うんだ?」

悠真は箸を置いて、秋幸に尋ねた。秋幸は困惑を深めて、そして諦めたように口にした。

「俺は、悠真と違うように思ったよ」

「だから、何が?」

なかなか話を続けない秋幸に悠真が苛立ち始めたころ、秋幸はようやく話し始めた。

「俺はさ、今日の紅を見て安心したよ。悠真は紅が春市と千夏を、場に入れなかったことに対して、紅が二人と距離を取ったように思ったようだけれども俺は違う。俺は今日の紅を見て安心したよ」

「だから何で?」

悠真が詰め寄ると、秋幸は苦笑した。

「少し、落ち着いて聞いてくれないか?」

その秋幸の仕草が妙に大人ぶっていて、悠真は何も言えなくなってしまった。たった二年年上なだけで、これほど大人になれるのかと思うほどだ。平凡な印象をしているから話しやすい秋幸も、悠真よりも大人で物事を深く考えているのだと思わされる。悠真は何も言えなくなってしまった。


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