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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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紅城の赤い時間(4)


 悠真と秋幸は紅から一つの部屋を借りている。近くにアグノや杉もいるだろうが、悠真には関係ない。彼らの近くには春市と千夏が控えている。アグノと杉のことを思い出すと、紅が春市と千夏を遠ざけたことが同時に蘇ってくる。誰にでも優しく、おおらかな紅が春市と千夏を明らかに区別した。今まで紅という人を信じていた分だけ、悠真は裏切られたような気がしていた。悠真にとって、二人は仲間だ。もちろん、義藤が特に紅に近しいことは理解している。だから、義藤を特別扱いしても良い。しかし、春市と千夏を明らかに区別することは間違っている。仲間を思う紅らしくない。


 膳を自室へ運び、秋幸と一緒に食事を摂る。その時も悠真の心は、様々なことで悩まされていた。玄米ご飯に、味噌汁、卵焼き、焼き魚と、紅城の食事は悠真にとって御馳走だった。それでも、今日は美味しいと思えなかった。

「どうかした?」

秋幸が茶碗を膳に置いて、悠真に尋ねた。辺りは暗くなっている。紅城へ戻った時に、遅い時刻だったのだから当然かもしれない。

「いや、何も」

悠真は答えたが、秋幸はまっすぐに悠真を見て言った。

「難しい顔をしているよ。どうかした?」

悠真は秋幸の言葉にはっとした。知らず知らずのうちに、眉間にしわを寄せていた。凄いな、と悠真は思った。秋幸は本当にすごい。秋幸は春市と千夏と近しい。だから悠真は、秋幸ならば悠真の感じる不信を理解してくれるはずだ。そう思った。

「紅のことが分からなくなったんだ」

悠真は口を開いた。紅という人が、人と人と区別する。区別は差別につながる。信頼できる仲間だけを近くに置いて、他の人とは距離を取っていく。それが信じられなかった。第一、春市と千夏は信頼できる人だ。

「何が分からなくなったんだい?」

秋幸は少し身を乗り出して尋ね、悠真は口を開いた。

「紅が春市と千夏を追い出そうとしているみたいで……」

悠真は思いの丈を伝えようとしたが、どのような言葉にすれば良いのか分からない。秋幸は少し目を見開き、そして吹き出すように笑った。

「追い出すって、そんなことないよ。なんで、そんなことを?」

秋幸が笑った。

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