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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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紅城の赤い時間(3)

 佐久のことを思っている人がここにもいる。佐久の仲間は術士だけでないのだ。術士でない者も佐久を思っている。それが一重に佐久の人望なのか、それが佐久の持つ優しさなのか、悠真には分からない。先の朱護頭という地位に立つのに、今は学に生きている。そんな佐久を慕っている人は、術士だけでないのだと教えられる。佐久という人が、どのような人なのか教えられる。

「渡しておきます」

秋幸は深く頭を下げた。

「お止め下さい、術士様」

給仕人は困ったような表情をした。秋幸が隠れ術士であることを彼らは知らない。彼らにとって、秋幸も悠真も将来を保証された優れた術士であるに変わりないのだ。地方配属でなく、良い意味での紅城内勤を保証される術士だ。同じ術士であっても、下緋たちは恐れる。まだ、役職も何も手にしていないのに、養成所でなく直々に陽緋や朱将の指導を仰いでいる事実が恐れさせるのだ。

 悠真は少し養成所にも興味があった。教師がいるのだろうか。授業があるのだろうか。どのような指導を受けるのだろうか。そんな疑問を抱いたが、十六の悠真が養成所に入るには少し年が経ちすぎているし、何より悠真には無色がついているが術をまともに使うことが出来ない。赤が色を貸してくれなくては、紅の石を使うことが出来ない。特殊な事情だから諦めるしかない。

「俺はまだ、何の役職も得ていません。同じです。普通の術士と同じです」

秋幸の平凡な雰囲気は、人を惹きつける。秋幸ならば大丈夫だと思わせるのだ。気安く話しやすい。秋幸の最大の長所だ。現に悠真も、秋幸と一緒だと安心する。平凡で気安いのに、とても先を見通しているから、安心できるのだ。

「いえ、それは……」

若い給仕人の困惑は深まるばかりだ。

「佐久に渡しておきます」

佐久に渡す平然と言える時点で、普通の術士でないだろうに、秋幸はそれを感じさせない。凄いな、と悠真は劣等感を深めるばかりだ。

「膳はまた、片付けにきます」

秋幸は深く頭を下げて、食事を皿に取った。


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