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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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紅城の赤い時間(1)

 夕食は秋幸と一緒に食堂へ膳をもらいに足を運んだ。紅城へ足を運んだばかりのころは、不信な目を向けられたものだが、秋幸が術士となった途端、話は変わった。義藤や野江らは役職ある術士だから自らの足で、食堂へ足を運ぶことは少ない。紅城で下働きをする者や、下緋らは食堂で食事を摂る。悠真たちもそうするべきだろうが、悠真と秋幸の距離は紅に近い。紅の姿は一般的には知られていないが、野江は知られている。陽緋野江に直接指導を仰ぐ悠真たちは、必然的に警戒される。羨望の眼差しで見つめられ、すり寄ってこられる。見ず知らずの、悠真たちよりも遥かに年上の術士たちや下働きする者たちに近づくには少し恐ろしい。紅城へ足を運んでから、慌ただしく、食事を部屋で食べることが多かった。いつの間にか、野江たちと同じように部屋で食べることとなったのだ。しかし、悠真と秋幸は食堂まで膳をもらいに行く。野江や都南、佐久、義藤らのように上げ膳下げ膳据え膳というわけにはいかない。可能かもしれないが、そのような状況に陥れば背が粟立つような気持ち悪さがある。結局のところ、田舎者の悠真も、山育ちの秋幸も、紅城の流れに慣れないだけなのだ。

 遅い時間だったためか、食堂には数人の術士がいるだけだった。食堂は広い板張りの間で、入口の近くに大きな椀が並び、中にはたくさんの食べ物が入っている。各自で膳を持ち、大椀から自らの茶碗や皿へと食べ物を入れるのだ。そして各自、板間で食事を摂る。

 食堂に足を運んだ悠真と秋幸に、食堂で食事を摂る術士たちは目を向け、そして背けた。佐久から習った話だが、選別で選ばれた子供は基本的に親元から離され、術士としての養成所(学校)に入る。そこで術のいろはを習うのだ。養成所で過ごす期間は十年に及ぶ。十年の間は基本的に養成所で過ごすが、群を抜いた才の持ち主は早期に養成所から紅城へと招かれる。以前聞いた話では、野江は養成所に入らなかったらしい。選別前の九歳で術士としての才覚を見出され、養成所に入ることなく紅城へ招かれた。それは、都南や佐久も同じらしい。彼らも養成所に入ることなく、幼い頃から紅城で育った。そして、義藤も同じだ。


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