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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色の温もり(13)

野江は陽緋だ。術士の頂点に立ち、紅と言葉を交わすことを許された存在。同じ女として紅の近くにいる。なのに野江は紅の苦悩の一端も知らないのだ。

「分かっているさ。分かっている……」

紅はそれ以上何も言わない。野江が強く握った紅の手。その手を紅が強く握り返してくる。紅の熱い手の力強さが野江の胸に迫った。紅は話さない。紅は赤の色神だから、野江とは別の世界で生きているのだ。

 不思議だった。世間から見れば、陽緋である野江は別の世界の人だ。そして野江からすれば、赤の色神である紅は別の世界の人だ。紅はどれほどの孤独の中にいるのだろうか。紅の本当の心はどこにあるのだろうか。口を閉ざしてしまうのは、話したくないからなのか、話せないからなのか分からない。話せないとすれば、紅が赤の色神だからだ。同じ、黒の色神には話せるのだろうか。話せないのだろうか。色神となる前からの付き合いである義藤や赤丸には話せるのだろうか。話せないのだろうか。

 紅の熱を持った手に力がこもっている。痛いほどの力は、野江に紅の心の一端を教えた。それはきっと、紅の心中の氷山の一角に過ぎない。氷山の一角でも感じることが出来るのは、とても光栄なことなのかもしれない。


――義藤は何をしているのだ


野江は、この場にいない義藤を責めた。嫌味の一つや二つじゃ足りない気分だった。義藤は紅の最も近くにいなくてはならない。野江のことを心配するなど不要なのだ。野江よりも、熱をもった愛しい存在を支えて、守らなくてはならない。悩んでほしくない。守りたいと心から思うのだ。

 先代は野江を助けてくれた。実年齢も、精神的にも大人でいつも余裕があるように感じられた。先代は戦いに適していない。術を使うことには長けていただろうが、今の紅ほどではない。刀を持つところなど想像できない。だから先代は、異国との戦いを拒否し暗殺されたのだ。穏やかな先代は戦いや刀よりも絵筆が似合う。

今の紅は、強い。術士としての力はもちろん、剣術にも長け、行動力もある。行動を起こすときは迅速で、大きな力で渦を巻き起こす。異色の色神と対峙しても物怖じせず、大きく構えている。なのに、なぜだろうか。心から守りたいと思うのだ。


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