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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色の温もり(10)

 夏が近づくこの自分。蛙の鳴き声が響いていた。田の多い場所では、うるさく感じるほどの蛙の鳴き声。都では田が少ないから、蛙の鳴き声は珍しい。野江の部屋の近くの庭に池はない。だから、蛙の鳴き声が響くのは、珍しい。

 仰向けに眠る野江は左手に熱い物を感じた。布団の下で、野江の手に触れるものがあった。微睡みの中にいた野江は目を覚まそうともがいた。野江は陽緋だ。異変があれば、どんな夢の中でもすぐに目が覚める。しかし、野江はすぐに飛び起きることが出来なかった。左手に触れる熱を持ったものが、とても心地よく感じたのだ。これは夢なのかもしれない。と野江は思った。熱を持ったものが、兄を思い出させたのだ。心地よく、なぜか安堵する。それは、野江に兄を思い出させた。だが、兄ではない。誰だかは分かっていた。それでも、その熱を兄だと思いたかったのかもしれない。兄だと思っても許してくれるから。

 

――兄様


兄とは術士になった二十年前に生き別れた。それ以来、兄の消息を野江は知らない。兄は家族と幸せになっているはずだ。もう、野江のことを気にする必要はない。たまに、兄の耳に野江の噂が届き、兄が自慢に感じてくれればそれでいい。

 もぞもぞと動くものが野江の布団の中に入ってくる。これは、ようよう放っておくことは出来ない。そう思って、野江は目を開いた。野江の腕にしがみつくもの。野江はゆっくりと目を開いた。布団の中に埋もれて、野江に腕にしがみつくもの。目覚めれば、姿を見ずとも分かる。


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