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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白が決める覚悟(7)


 それからも、何度も実験が繰り返された。何度も、何度も繰り返された。その度にソルトは生き残り、白の石で命を繋いだ。繰り返しの実験の結果、白の大部屋の仲間はすっかりと減ってしまった。

 ソルトの身体は弱く、生活するのに支障をきたすほどだった。ソルトの命を繋いだアグノの姿は見なくなっていた。もしかしたら、死んだのかもしれない。そう思うほどだった。ソルトは虚ろな希望の無い日々を過ごし、一歩、一歩、死へと近づいていた。死を待っていたともいえる。それでもソルトは生き残った。


 ソルトの前に突如白が現れた。最初は、幻かと思っていたのに、しばらくすると慌ただしく数人の大人が現れて、ソルトを連れ去った。連れて行かれたのは、雪の国の城だった。先のソルトが命を落とし、残された白の石が新たなソルトを選んだ。そういうことだ。

「こんな子供なんて」

大人たちが言っていた言葉が、ソルトの中で響いた。


――気を付けてください。ソルト


ソルトの世界が白に染まった。それは、医学院と同じ苦痛の色だ。その中で、白い髪をした色白の男が立っていた。それが色なのだと理解するのに時間はかからなかった。


――私は白です。貴女をソルトに選んだのは私です。貴女は、私の愛しいレディー。私の世界を変えてくれたのが、貴女なのです。


これが白なのだと、白に対して怒りを覚えたのはこの時が最初だった。


――白の色神は、命を救う神として扱われ利用されます。貴女は、貴女として戦ってください。


雪の国の城は敵ばかりだった。口八丁で医学院へ乗り込み、医学院を廃止させ、ソルトはアグノを取り返した。

 幸い、アグノは術士の才覚に恵まれていた。雪の国での術士は、必然的に医師となる。術士であれば、必然的に白の医師となる。なぜ、アグノが術士としての才覚を隠していたのか。それは、アグノが故郷を救うために選んだ道らしい。石の力で救うことが出来る命は限られている。アグノが欲していたのは、万人を救う力だ。そのために、医学院の知識が必要だったのだ。

 アグノは術士だから、ソルトの近くにいてくれた。近くにいてくれたから、嬉しかった。医学院は、ソルトとしての権力を使って潰した。握りつぶして、消し去った。アグノの故郷は、もう無くなっていた。流行病で全滅したのだ。医学院の知識ならば、救えたはずなのに、実験体と堕ちたアグノが手を出すまでもなく滅びたのだ。

「すべては、己自身で選んだ道」

アグノは、とても強いと思った。雪の国にも、アグノのような人がいる。なのに、雪の国の城が冷たく感じるのだ。


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