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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤い免罪符(16)

 残された悠真と秋幸はしばらく身動きが取れなかった。悠真の背に汗が流れるのは、暑いからではない。乱れる一色、不和が悠真を息苦しくさせていた。赤の仲間たちはとても気持ちのいい色をしていた。見えずとも感じるのだ。互いが互いを労わる優しい色が、紅城には満ちていた。それが紅を守るという一点で集まった仲間たちだから、作り出すことが出来る色だ。なのに今は、仲間が仲間を追いつめ、苦しめる。紅もクロウも見えているはずなのに、平然としている。悠真は理解できなかった。

「悠真、大丈夫か?」

秋幸が立ちあがり、悠真に手を差し出した。秋幸は見えていないから、そのようなことが言えるのだ。今まで悠真が信頼し、信じていた仲間たちの色が不気味に感じるのだ。

「紅も野江も、一体何を考えているんだ」

悠真は立ち上がることが出来ず、畳を睨みつけて言った。柴が何かを隠していることは、悠真たちでも気づいていた。森の中で問うても、柴は大きく包み込むように笑っていた。その柴が今はどうなっている。大きさを失い、射抜くような色をしている。これが柴なのかと、分からなくなる。柴を追い込んだのは紅と野江の二人だ。

「何を考えているかなんて、分からないよ」

秋幸は言うと、差し出していた手を引っ込めて、柴が手拭いで結んだ矢守結びに触れた。あの時、柴は断片的に己のことを語っていた。本当なら、柴が隠しておきたかった秘密だ。その秘密を引きずり出したのは、野江と紅だ。

「柴も矢守結びを結ぶ。野江と宿屋を襲撃した犯人を同じだ。柴は、犯人とつながっている。そんなこと、紅も野江も気づいている」

悠真は柴が手拭いで結んだ矢守結びに目を向けた。柴はなぜ、ここで矢守結びを結んだのか。あんな、射抜くような色をしながらも柴は色神を守るための結びを結んだ。


――免罪符


その響きが悠真の心に残った。柴は許しを乞うている。一体、誰に。それは、紅にだ。

「悠真、行こうか」

秋幸が再び悠真に言った。平凡なのに非凡は秋幸らしい。秋幸は、達観した視点で今の騒動も見ているのかもしれないのだから。

「行こうか」

悠真も立ち上がった。部屋には、不和の色が色濃く残っている。その色を打ち消すように、秋幸は三つの矢守結びを拾い上げて、手拭いに包むと丁寧に懐の中に入れた。


 外に出ると、辺りは暗くなり外廊下に灯りが灯されていた。

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