赤い免罪符(14)
「荒れているな」
遠次が困ったように笑っていた。まるで、駄々っ子に手を焼いているようであった。それでも平然としているのは、今回ようなことが初めてでないからだろう。義藤が品よく笑った。
「遠爺、後で紅と、それとなく話をしておきます。裏道から帰ったのなら、俺が追いかけたところで見つからないでしょう。こんな状況ですが、裏道に入れば赤影が近くにいるはずです。紅の御身は心配いらないでしょう」
落ち着いた義藤の様子が印象的だった。荒れる紅に驚くでもなく、叱責するでもなく、とても大らかに受け入れている。そして、義藤はゆっくりと話した。
「野江、紅の言うとおりです。休んでいてください。俺が、後で柴のところへも行ってみます。こういう時は、部外者が入るのが一番です。客人二人のことも、任せてください」
義藤は淡々と話、野江は苦笑した。
「流石と言うべきね。義藤。気苦労が絶えないわね。あなたがいなければ、あたくしたちは、とっくに仲間割れをしていたかもしれないわね。良くも悪くも、義藤はあたくしたちと世代が違うわ。あなたは客観的なのですから。ほんの数年違うだけで、まるで別組扱いされるのだから、義藤にとっては不服でしょう。でも、少し世代の違う義藤がいるから、あたくしたちの和は乱れずに済んでいるのかもしれないわね」
義藤は困惑したように目を伏せた。
「俺は何もしていません。あなた方は、俺の超えるべき目標です。それは今も昔も変わりなく、俺は和を繋いだりなんてしていません」
当然のように義藤は言った。義藤は向きを変えて、クロウに向いた。
「慌ただしくてすみません。あとで部屋にご案内します」
義藤が頭を下げて言うと、遠次が笑った。
「義藤、黒の色神のことは気にするな。儂が案内しよう。お前は、紅のことを考えてやれ」
遠次は言うと、ゆっくりと立ち上がった。
「クロウ、こちらへ。秋幸、悠真。お前たちも休め。風呂は自由に使うが良い。もう分かるだろ。腹が減れば、飯をもらいに台所へ行け。世話人をつけても、お前たちは落ち着かないだろ」
遠次が言うと、クロウもゆっくりと立ち上がった。