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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤い免罪符(13)

 残された紅は、入ってきたばかりの二人に言った。

「悪いが、もう一度さっきの部屋に戻ってくれるか?今日は、泊まっていくと良い。春市、千夏」

紅が呼ぶと、障子が開き春市と千夏が姿を見せた。

「何でしょうか」

二人は外廊下に座ったまま、紅に頭を下げた。

「今日、二人はここに泊まる。二人の世話を頼めるか?何か困ったら、紫の石で連絡をくれ」

春市と千夏は深く頭を下げ、来客二人は何も言わずに立ち上がり、春市と千夏に連れられて立ち去った。


 突然、紅が緑色の畳の上に寝転がった。大の字になって寝転ぶ紅は、大きく息を吐いた。

「紅、おやめなさいな」

野江が紅を失跡したが、紅に堪えた様子は見られなかった。それどころか、紅は大きく奇声のような声を上げた。

「あああ!あああああ!」

突然の紅の行為に、悠真は身を固めた。それは、部屋の中にいた全員が同じだった。紅は大の字で叫ぶと、ごろごろと部屋の中を転がり畳を爪でひっかくように暴れた。

「紅、どうした?」

遠次がそっと紅に尋ねた。年の功とは流石のもので、遠次の穏やかな声が部屋に響くと、部屋の中の乱れた色が落ち着くようであった。紅は伏せて、拳で畳を叩いた後に言った。

「どうもこうもないさ。遠爺は、色が見えないから、そんな呑気なこと言えるんだ。柴のあの色。私は、柴のことを誤解していたんだと痛感させられる」

紅は色神だから一色を見ることに長けている。悠真よりも、一色をはっきりと見て、感情の移り変わりにも敏感だ。

「彼の一色は変わった。だが、真の彼の色は、あの色だろうな。一色は生まれながらのものなのか、生きる過程で決まるものなのか分からない。だが、確かなことは、彼の大きさのある色は、生きる過程で手に入れたのだろうな。何にも動じない大きさのある色なんて、存在しない」

クロウが言った。クロウは黒の色神だから、一色を見ることに長けている。だからクロウも分かるのだ。

「私は甘えていた。柴に甘えていたんだ。あの大きさに、あの強さに私は甘えていた」

紅は顔を両手で覆っていた。誰も何も言わない。しばらくすると、紅は勢いよく起き上がった。

「帰る。野江、休んでいてくれ」

言うと、紅は勢いよく歩き、外廊下へと出ていった。障子は開きっぱなし、豪快な紅らしい。義藤は姿勢よく座っている。空いた障子の先、外廊下を悠真が見ると、そこに紅の姿はなく暗くなり、少し冷たくなった空気が漂っているだけだった。


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