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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
540/785

赤い免罪符(12)

 男は異人であった。髪の色も瞳の色も異質で、体がとても大きいのだ。女は火の国の民だろうか。見た目は何も変わらない。

「春市、千夏。外で待っていてくれ」

紅は春市と千夏を当然のように外にだした。いつもは、分け隔てなく接する紅が、どこか一線を引いているように見えた。いつもの紅でない、と悠真の中の紅の姿が変わった。


――理想の紅


もしかしたら、悠真は紅に対して理想の紅の姿を作っていたのかもしれない。気さくで、誰にでも優しい行動力のある紅。しかし、今の紅は違う。まるで、選んだかのように春市と千夏を外に出した。秋幸と悠真は中にいるのにもかかわらず、外に出したのだ。

 当然のように、春市と千夏は障子の外に出た。悠真は、その理由が分からなかった。

「楽に座ってくれ」

紅が大仰に言った。足を引きずる異人も、若い女も悠真の近くに腰を下ろした。二人が何者なのか分からず、悠真は変わる変わる二人を見比べた。

「アグノと杉だ。野江と鶴蔵を助けてくれた恩人だ。野江を助けてくれたから、という意味はないが、私は明日からの行動を考えてみたんだ。私たちはどうするべきなのか。何が最善なのか。――影の国が、火の国の内部で白の色神を殺そうとしている。自分の身を守るのが精一杯なのに、私はそれでいいと思えないんだ。みんな、協力してくれないか?私は、白の色神を助けるために、影の国の暗殺者と戦う。野江から話を聞いて、どうも腑に落ちない部分もあるんだ。皆の身を危険にさらす。でも、私は動きたいんだ」

紅の声は強い。それでも、先ほどの一件があってから、悠真は紅が紅でないように思えるのだ。

「俺は、紅を侮っていたようだな」

柴が、ゆっくりとした動作で立ち上がった。部屋に満ちる雰囲気が変わった。発せられる色が変わったのだ。大きさはない。背筋がぞくぞくと泡立つような、内臓を握りしめられたような、そんな気がした。一言でいえば、恐ろしかった。悠真以上に色をみているはずの紅は平然としていた。

「侮っていたとは?」

紅が柴に問いかけたが、柴は紅に背を向けた。

「紅は、もう大人だ。今日、それが分かったよ。――野江の新しい紅の石を加工してくる」

柴が苛立っていることは明らかだが、紅は何も言わなかった。

 柴が障子を開くと、外廊下に座って控える春市と千夏がいた。柴は大きな声で二人に言った。

「お疲れだな」

柴は二人を労うと、大きな足音と共に姿を消してしまった。


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