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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
532/785

赤い免罪符(4)

 都の人々の間を縫って馬を走らせる柴は、なんとも迷惑な人だ。都の人は見事に馬を避けるのだ。役所から紅城まで一時もかからなかった。

 夕日が紅城に反射し、紅城の赤い色は一層と際立っていた。不思議なことに、門は開かれたままで、厩番の一人が浮雲を連れて厩へと向かっていた。二頭の馬は勢いよく門の中に入り、門番は慌てふためいていた。しかし、人に見おぼえがなくとも馬に見覚えがあるらしく、門番は慌てて柴たちを中へと導いた。

「悠真、降りろ」

柴が言い、悠真は落ちるように舞風の背から降りた。そのあとに柴も馬から降りた。見渡せば、秋幸も絹姫から降りている。

「野江はどこへ行った?」

門番は慌てながら答えた。

「朱護頭義藤様が連れていかれました」

柴は手綱を門番へ渡した。

「悪い、舞風を絹姫を厩へ。休ませてやってくれ」

秋幸ももう一人の門番へ絹姫の手綱を渡していた。

「行くぞ」

柴は慌ただしく駆けだそうとしていた。しかし、門番が柴を引き留めた。その手は柴の着物の袖をつかんでいる。

「一体、何があったのですか?」

問う門番に柴は答えた。

「何も心配するな。何が起ころうとも、火の国の危機は紅様が守ってくれるさ。だから、我ら術士は、火の国を守る紅様を守るだけだ」

柴は門番の肩を叩いた。その動作の一つ一つに柴らしい大きさを感じられた。何気ない一つ一つの言葉と動作が柴の大きさを伝えてくれる。大きさが安心を伝える。一色が見えずとも、柴の大きさは感じられるはずだ。一色が見えるともいえ、悠真の見る一色は不完全だ。なのに、柴の大きさは常に感じられる。この大きさが柴という人なのだ。大きさが安心を与える。どのような人生を歩めば、柴のような大きさを手にすることが出来るのか想像できない。生まれ持っての大きさならば、柴は生まれながらにして、人を包み込み導く定めを持っているようなものだ。

「わかりました。舞風と絹姫は厩番へと預けておきます」

ほっとしたような表情をした門番は頭を下げ、柴は走り出した。悠真は秋幸と一緒に柴の後を追った。


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