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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
531/785

赤い免罪符(3)

「ありがとな。村瀬。悪いが、このことは誰にも言わないでくれ」

柴が言うと、村瀬は深く頭を下げた。

「そのくらいの分別はあるつもりです」

柴はげらげらと笑った。村瀬も隠すべきだと判断した秘密だ。術士でない村瀬がそのように判断するくらいなのだから、よほどの秘密だ。

「待たせて悪かった。もう、帰ってもらっていい」

村瀬は深く頭を下げると閉じられた戸へと向かった。そして、一度、振り返ると言った。

「柴殿。私は信じております。あなた方術士の力を信じております。所詮、私は術士の才覚に恵まれなかった身。大きな力から火の国を守る力はありません。ですからこうやって、一役人として民の生活を支えるのみです。柴殿、あなたは術士としての才を持ちます。しっかりしてください。術士が紅様を守れなくて、誰が紅様を守るのですか?この、騒動続きの都の中で、民の不安は増える一方です。あなたがた術士の力が必要なのです」

村瀬の言葉は激励以外のなにものでもない。術士の才を持つ柴への、術士の才能の無い村瀬からの激励。悠真は忘れかけていた。今、多くの優れた術士に囲まれることで、術士がどれほど貴重で強い力を持っているのかということを忘れかけていたのだ。紅城へ足を運ぶ前、悠真にとって術士は雲の上の存在だったのだ。紅の石を持つ優れた術士は、一人で強大な力を持つ。

「当然だ、術士を侮るなよ」

柴がげらげらと笑った。

「じゃあ、また顔だすさ。また、戸籍の用意を頼むかもしれないからな」

「その時は、よろしくどうぞ。柴殿に仲間が増えるたび、それなりの戸籍を作りましょう。私が生きている限りはですがね」

村瀬は言い残して、戸を開いた。


 悠真は柴に、紙に書かれてあったことを尋ねる勇気がなかった。柴は、優れた術士だ。特に柴は、術士の中枢だから、柴が隠すと決めたことは隠されるべきことなのだろう。それが、先代の紅に関わることならば尚更だ。


「どうした、紅」


突然、柴が口にした。唐突に紅に呼びかける時は、その先に紫の石があり、さらにその先に紅がいることを悠真は理解していた。


「そうか、良かった……。今は役所だ。すぐに帰る」


柴は言うと、秋幸に言った。

「紅城へ帰るぞ。ついてこい」

言って柴は舞風の腹を強く蹴った。


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