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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色の脱獄者(15)

 浮雲に野江は乗った。手を貸してくれたのは鶴巳だ。もう一人、アグノも浮雲の背に乗った。当然だ。足を痛めたアグノが歩くのは難しい。野江を前に、アグノが後ろに乗る。浮雲の頭絡を鶴巳がつかみ、鶴巳が浮雲を引いて歩かせる。野江の意識は朦朧としていた。それでも野江は必死に目を開いていた。そうしなければ、野江は今にも崩れ落ちてしまいそうだから。

 鶴巳と杉が歩いているから、浮雲はゆっくりと足を進める。野江の体を、そっとアグノが支えてくれていた。異邦人であるアグノは、火の国の民よりも体が大きい。だからかもしれない。野江は柴を思い出していた。

「大丈夫ですか?」

そっとアグノが囁いた。野江は何も答えなかった。大丈夫でない。しかし、そう答えると唯一保たれている野江の意志が折れてしまいそうだからだ。

 森を抜けて都へと入る。都の横の森には不思議な力があるとされている。深い森で迷うことなく歩むことが出来るのは、なぜか術士だけなのだ。都の中は、ざわめきで満ちていた。何かが起こったのかおしれない。しかし、何が起こったのか、野江は知らない。


 時は夕刻に近づいていた。


 都の人々は野江を見て、逃げるように目をそむけた。赤い羽織を脱いだ野江が陽緋だと、気づく者はいない。傷ついた女がいるだけだ。都に入ると安堵する。そして、野江の目に紅城の雄大な姿が入ったとき、まるで心の重荷が下りたようであった。


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