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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色の脱獄者(13)

人の脳をいじって、思うように操る。命令をする道具にしてしまう。そのようなこと、信じられない。だが、そこに杉がいる。アグノの言葉は優しい。

「萩はあなたを助けたかったのでしょう。だから、見張りという役をつけて、私たちにあなたを託した。素晴らし人ですね」

そしてアグノの優しい言葉は続く。

「柴という人は、幼い頃攫われて、影の国の術士として暗殺者として育てられ、そして逃げ出すか助け出されたのでしょう。それで、赤の色神の下で働くようになった。柴という人がいまだに影の国と通じているのか、それは分かりかねます。ですが、野江たちならば分かるのではないですか?直接、当人を知っている人ならば分かることもあるでしょう」

野江は柴を思い出した。柴の大きさは、野江の知るものだ。

「あっしは、柴はんのことを何も知りやせん。でも、柴はんに紅城に連れてきてもらったことには感謝しておりやす」

鶴巳の言葉は野江の気持ちと同じだ。アグノがゆっくりと口を開く。

「野江、敵の正体は分かりました。敵は影の国。狙いはソルト。影の国の術士はとても強い。ですが、事態は最悪の状態を免れています。きっと、萩を実行するために命を奪う己の立場に疑問を抱いています。その事実が、私たちを守ってくれています。萩の指示によって、杉が見張りに残ったことが何よりのチャンスです」

アグノの優しい言葉に野江の不安は薄れていく。柴のことを何も知らない野江であっても、柴の大きさは知っている。


柴の言葉が野江の中で蘇る。


――野江、諦めるなよ。今は歩くのがきついかもしれない。そりゃあ、野江は座敷の中のお人形だったんだからな。でも、今は違う。歩けば疲れるし、転べば痛い。人の言葉は冷たく胸に刺さり、視線は背中に刺さる。それでも、それが生きているってことだろ。昨日よりも今日の方が強くなれる。今日よりも明日の方が強くなれる。超えろよ、俺を。野江ならできるさ。


野江は身体が弱かった。当然だ、九年の間、外に出ることなく育ったのだから。その野江が一人前の術士になれたのは、柴と鶴巳と先代の紅と先代の赤丸のおかげだ。柴をみて笑うのは先代の紅だ。


――柴、あんまり野江を苛めるなよ。野江は自由でいい。笑って、泣いて、怒って。それでいいんだ。誰も責めたりしないさ。


それでも、どうしようもない時、野江を支えてくれた女性がいた。先代紅と一緒に死んだ女性。間違いなく、先代の赤丸だ。


――野江は女の子でしょ。女はね、強くなれるのよ。


その時は知らなかった。彼女が赤影の筆頭「赤丸」であることを。


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