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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色の脱獄者(7)

 時間も欲しい。

 だが、石も欲しい。


 野江の考えは紆余曲折していた。正しい答えなんて存在しない。どちらを選んでも、後悔するに違いないのだから。この絶望的な状況で、一寸の希望を探して、野江は暗い洞窟を見渡した。


(兄様……)


野江は兄を思った。二十年前に別れて、今は安否も分からない。術士として鍛錬を積んだ期間、陽緋として戦い続けた期間、野江は兄のことを忘れてはいないが兄に助けを求めることはなかった。今、野江の気持ちが弱まっているからだけなのか、兄の夢を見たからなのか、幼い日のことが度々思い出されるからか、野江の感情が乱れているからなのか分からない。ただ、野江は兄に助けを求めた。


(兄様)


野江をいつも守ってくれていた兄。兄ならばどうするだろうか。野江は数を数えた。あと、十秒で見つからなかったら先へ進もう。それが数え終わると、あと二十秒で見つからなかったら先へ進もうと。結局、結論を下すことの出来ない野江は足を止めるだけなのだ。


(紅、あなたなら、どうするの?)


野江は心の中で紅に尋ねた。野江より九つも若い紅は、いつも強い女性だ。紅の生きる世界は、きっと野江より生き辛いものであるのい違いないのに、紅はいつも行動的なのだ。黒の色神が来訪してきたときも、紅は義藤と秋幸を連れて最前線で戦った。その無茶な性格に、野江は何度も悩まされたが、その無茶な行動に野江は何度も救われていた。


(紅、兄様、あたくしはどうすれば良いの……)


野江は数を数える。未来を見つけるために、答えを見つけるために。



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