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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色の脱獄者(5)


 その時、錠が外れる音が響いた。

「外れた」

鶴巳の感嘆の声がして、野江は左手で右腕を押さえたままゆっくりと立ち上がろうとした。しかし、眩暈がひどくてうまく立ち上がれない。そんな時、素早い動きで鶴巳が野江に駆けよりそっと手を差し出した。

 昔から変わらない。立つこともままならなかった二十年前、鶴巳はこうやって野江に手を貸してくれていた。

「ありがとう、鶴巳」

野江はそっと鶴巳の手を取った。

 鶴巳に手を借りて立ち上がっても、激しい眩暈のために崩れ落ちそうになる。

「野江、しっかり」

鶴巳の声が優しく響く。昔より、低くなった鶴巳の声だ。ぼさぼさ頭の鶴巳からは、兄と同じ大地と草の匂いがした。


 鶴巳は野江とアグノに肩を貸して、足を進めた。洞窟の中に誰かいれば、それは即野江たちの死につながる。それでも、野江は確信をもって脱出を計画した。敵に、野江たちに見張りをつける人員的余裕がないと考えていたからだ。敵の数は少ない。そして、捕えているのは陽緋とはいえ手負いの野江と、手負いの白の術士、そして術の使えないからくり師。大した問題にはならない。

 どこかに石があれば。野江は思った。自らの紅の石でなくても、加工されていない紅の石。もしくは青や黄の石。黒の石。戦う力のある石が野江は欲しかった。術士である野江は、色の石の力が必要なのだ。

 何度か足を取られながら進む洞窟の中は、不思議と生活感があった。彼らは、どのくらいの期間、この洞窟に潜んでいたのか。白の色神が火の国に足を運んでからそれほどの月日は流れていない。影の国は、もともと火の国に潜んでいたのか。それとも、白の色神を殺すために足を運んできたのか。

 野江は思考を巡らせた。野江を襲撃してきた男――アグノを連れてきた男は、間違いなく火の国の民だ。あの言葉は紫の石を使用しているものではない。顔立ちも、雰囲気も、火の国の民で間違いない。なのに、彼は影の国として白の色神を狙う。


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