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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白の家族(9)


 この没落した家には多くの人の思いが込められている。二十年間に首を吊ったのは、何人だろうか。ソルトは天井を見上げた。白の石は命を救う石だ。その石を多くの人が欲するのに、自ら命を捨てる人がいる。それほどの絶望を与えることがあるとは思えなかった。

「私の家族は愚かなことをしたよ。命を自ら捨てるなんてね」

ソルトは再び無粋な質問をした。

「旦那様は今、お元気なの?」

尋ねると吉枝は笑った。

「さあね、死んだという話はこないよ。出会った時から、言っていたのだから。官吏になって、火の国を変えるって。呪われた子なんて、言われないような時代を作るために働いているのだろうね。そんなこと、出来ないだろうけど」

ソルトは吉枝の話を聞いて呪われた子とはどのような存在なのだろうと思った。そのような子は存在しない。呪われた子と呼ばれるのは、見た目に関わるものが多い。そのほとんどが医学的理由がつけられるものだ。医学院では、そのような研究もしていたから分かるのだ。

 世の中で最も恐ろしいのは無知だ。本当は呪われてなどいないのに、無知ゆえに呪われていると、異形だと勘違いする。思えば、森の中にいた薬師も本来ならば森の中で生きる必要のない者だったのだから。黒の色神の毒に襲われた者を救った優れた薬師だ。雪の国での貴重な人材だ。


 吉枝の姪が生まれたのは三十二年前。思えば、薬師もそのくらいの年齢ではなかっただろうか。

「呪われた子に名前はあるの?」

ソルトは尋ねた。呪われた子なのだから、名をつけられなかったかもしれない。

「義兄たちは、最後まで捨てることを嫌がってね、名をつけていたよ。家のため、私の夫に預けたに過ぎない。名前は葉乃。義兄たちは、そうつけていたよ」

ソルトは何とも言えない気持ちになった。


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