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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
501/785

白の家族(4)

 ソルトは木の匙で粥を救った。白い粥はとろみと水気の塩梅がちょうどよくて、木の匙から零れ落ちる。湯気の立つ匙を口に近づけ、息を吹きかけるとソルトは口に中に入れた。


――温かい


ソルトは思った。身体の中に熱が生まれる。冷えていた心に温もりが生まれる。作った人の人柄が現れているようであった。

「**********」

冬彦がパリパリと音を立てながら漬物を口にしていた。嬉しそうに吉枝は微笑み、皺のある手で膝をさすりながら言った。微笑みの中には、照れの色が強い。

「**********」

その会話は、まるで家族のようであった。

「ああ、遠慮なく頂くよ」

冬彦はすするように粥を口の中に流し込んでいた。

 粥は流れるようにソルトの身体の中に入り、温めていく。塩味の漬物も、米の甘味も、ソルトの身体を温めていく。そして、冬彦と吉枝の様子。まるで、家族のようであった。

「温かい」

ソルトは思わず呟いた。温かいのは粥でなく、二人の存在であった。

「温もったか?」

冬彦が目を見開き尋ねた。ソルトの身体は少しずつ、温もっていた。

「*********」

吉枝が冬彦に何かを尋ね、冬彦は短く「ああ」と答えた。すると、吉枝は何とも嬉しそうに微笑んだ。

火の国は温かい。アグノが一緒だったら、どれほど良いだろうか。ソルトは思っていた。アグノにも、この温もりを分けてあげたかった。凍てつく雪の国の冬、ひんやりとした夏。雪の国には熱が少ない。雪の国の城にも、熱が少ない。大理石の床は冷たく、石膏の像は冷たい。皿は冷たく、白い色は冷たさを印象付ける。こんなにも温かい火の国に生きる、赤の色神が少し羨ましく感じた。きっと、赤の色神の命を狙う者なんてなんていないだろう。こんなにも温かい火の国に、どのような不満があるというのだろうか。ソルトには無い。生活のレベルは雪の国の方が高いかもしれない。しかし、火の国の民には皆、活気があった。地方の様子を詳細に知っているわけでないが、都には地方から来たという者も多くいた。その者たちも、故郷への思いを語り、決して貧しさの不満に口をしたりすることはなかった。


一色も本話で501話目になります。一話が短いので、ストーリーはなかなか進みませんが、これからもよろしくお願いします。

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