表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
499/785

白の家族(2)

 ソルトは寒さに震えていた。そんなソルトの額に冬彦の手が触れた。冬彦の手はしっとりと汗ばんでいる。この部屋の気温はかなり高いのだ。なのに、吉枝や冬彦は何も言わず、火鉢に火を入れてくれている。

「寒いのか?」

冬彦はソルトに尋ねた。そして、ゆっくりと口を開いた。

「紫の石を俺にくれ。俺が石を使う。紫の石を使うのも、負担だろ」

冬彦は優しい。その優しさはアグノとは違う。アグノの包み込むような温かさはない。それでも、ここに冬彦がいる。それだけで、ソルトは幸せに思えるのだ。

ソルトは震える手で、首に掛けてあった紫の石を取った。冬彦はソルトの手ごと包み込むように両手で握った。

「ソルトの声は、俺に届いている。俺に届いているさ」

冬彦の両手は温かい。アグノのように大きくなくて、骨ばった手。これが、ソルトと年齢の変わらない冬彦の手だ。


――温かい。


ソルトは思った。冬彦の温もりが温かい。

「*************」

吉枝はゆっくりと立ち上がり、着物を正した。年老いた吉枝の動きには品があった。その品とは、没落したとされるこの家で生きた吉枝の人生を物語っていた。


 冬彦はソルトの手を両手で包んでくれている。とても温かい手だ。どれほどの時間、そうしていただろうか。冬彦の温もりがソルトの身体の中に流れ込んでくるようだった。不思議と、身体の震えは落ち着いてきた。冬彦は何も言わない。何も話さないのに、ソルトの心に何かを語りかけてくる。


――温かい。


ソルトはじっと冬彦を見た。冬彦は火の国の民だ。なのに、雪の国の民よりも白が似合う。これほどまでの、白の一色をソルトは見たことがないのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ