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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤い追跡者(16)

野江が名家の御令嬢。それは、納得がいく。野江の品の良さは、幼い日に培ったものだろう。野江が名家の御令嬢ならば、全て納得がいく。あの、時折見せる口の悪さを除けば、のことだが。

「野江を迎えに行ったのは、惣爺と俺さ。野江の第一印象?そんなの、決まっている。俺は野江が術士として勤まらないと思ったさ。野江は細く、白く、弱かったのだから。なのに、野江は信じられない根性を見せたのさ。普通の男なら逃げ出したくなるような過酷な訓練にも耐えて、歴代最強の陽緋となった。二十年前の野江しか知らない者は、野江が刀を握る姿なんて想像できないだろうな。――野江は強い。根性もある。何があっても戦い抜く力がある。だから、俺は野江を信じている。野江の強さを知っている。野江は、俺を超える術士だ。安心しろ」

柴が野江に対する信頼。それが言葉の端々から伝わってきた。信頼がなければ、陽緋の地位を譲ることなんて出来ないだろう。

 野江は強い。そんなこと、悠真も知っていた。初めて出会った日、滅びた村で悠真は野江に押さえつけられたのだ。細い手足に信じられない力がある。あれは、腕力でなくて技術なのだ。

「意外でした」

ふと、秋幸が口にした。

「何が意外だ?」

柴はゆっくりと身をひるがえした。目指すは舞風の場所。探すのだ。敵の標的を。


――白の色神を。


「あなたは、どこか卓越した人です。その大きさは強さで、その大きさは温かさです。野江、都南、佐久の三人より少し上の世代。それがあなたです。常に余裕があり、常に一歩先へ行き、常に導く。そのあなたが、まるで嫉妬しているようです。若い世代の才能に」

出会った時から、秋幸は平凡さの中に非凡さを持つ人だ。柴は小さく笑った。

「敬語、やめろよ。義藤のように、それが難しいのなら、俺の名を呼べ。名は人と人とを結ぶもの。名が、俺と秋幸の距離を縮める。悠真の遠慮のなさを見習え。俺たちは、対等な立場の仲間だ。秋幸も呼んでみろ」

柴の言葉は大きく広がりを持つ。全てを受け入れる大きさが柴にはある。紅を裏切るのではないかという杞憂をした悠真であったが、今はすべてが無用なことだと分かる。柴の大きさを見て疑うことが出来る者などいようか。それが断片的にでも一色をみることが出来る悠真ならなおさらだ。一色を見ることが出来る紅が、柴に置く信頼がいかに大きいか想像するに容易い。


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