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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤い追跡者(14)

「あくまで噂でしかありません。先代の紅様の暗殺を企てている者がいると。それに気づいた一人の民が、紅様に情報を流し、暗殺計画を未然に防いだと」

柴の息が荒くなる。

「その、先代に情報を流した者の名は?」

柴の問いに、中年の女術士は首を横に振った。

「いえ、そこまでは。あくまで噂でしかありませんし、そもそも、ただの民が紅様にお会いすることが出来るはずがありません。紅様に情報を流すことなど、できるはずがありません。ですから、これは噂でしかありません。紅様を崇める民が、紅様に心酔したが上に流した噂だと」

中年の女術士は小さく笑みを浮かべた。彼女の言うことは正しい。悠真たちは紅城で気安く紅と接しているけれども、民の中で紅は「色神様」なのだ。色神は神だ。崇められ、祀られ、拝される。その紅と只人が面識を持つことなど出来ない。

「確かに。その噂には憶測の部分が多い。けれども、俺が探している情報に近しい物がある。礼を言う。――後は、仕事に戻ってくれ。敵は都を破壊したりしないさ。混乱を抑えるために、術士が出動することが大切なんだ。赤い色を持つ野江らが堂々と姿を見せて安心させることが出来ない。だが、皆術士だ。下緋であっても、術士の才覚に恵まれたことに偽りはないんだ」

柴の言葉は大きい。大きな力と立場を持つ柴は、包み隠すことなく下緋を労わる。その柴の大きさに悠真は魅力を感じた。柴の大きな背中。大きな手。大きな身長。悠真が持っていないものだ。

「さあ、行ってくれ」

柴が言うと、中年の女術士は深く頭を下げて立ち去った。混乱する民を現場から遠ざけ、都を混乱の渦から守る。混乱の渦から守ることが暴動を防ぐ。下緋は術士の末端。火の国各地に派遣され、火の国の端々を守る。何か事態が起これば、中枢に報告する。もちろん、彼らは紫の石なんて持っていないから、合図は紅の石の発動となる。異常な紅の石の発動に紅が感知し、中枢の術士を派遣する。赤の仲間を、赤の術士を派遣するのだ。

「すみません、これを見てください」

ふと、秋幸の声が響いた。

「どうした?秋幸」

柴は答えた。秋幸は柴に何かを差し出している。それを目に向けると、その手には紐が握られていた。

 悠真にはただの紐にしか見えない。しかし、その結びは何かを意味する。何かを意味する結び、それは……


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