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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤い追跡者(13)

女術士に柴は言った。

「術士の寿命は長いようで短い。戦いで命を落とす者もいる。二十年という年月は、術士の世界ではとても長い時間だ。その上、俺たちのように中枢に入ると細かな現場に派遣されにくい。実際に、民と接し、生きているのは末端の下緋だ。今のように、状況整理を行うのは、末端の下緋の仕事だ。だから、思い出してほしい。二十年前だ。何か印象に残るようなことはなかったか?」

柴の言わんとすることが悠真には分かった。柴はこのような時でも探しているのだ。


――浅間五郎


その人物のことを、探しているのだ。術士として紅城にいた柴が知らない。当時の柴のことを悠真は知らないが、彼の実力からして、それなりの英才教育を受けていたはずだ。だが、下緋の彼女は違う。彼女は下緋として、紅の手足として末端で動いていた。民と接するのは、中枢の赤の術士よりの、末端の下緋の方が多い。思えば、悠真の村にいた惣次も、その時の立場は下緋であった。

 中年の女術士は天を見上げ、目を細めた。

「なぜ、いまさらそのようなことをお尋ねになるのですか?」

そこまで言うと、中年の女術士は苦笑した。

「いえ、不必要な情報は混乱を招くだけですね」

中年の女術士の目が左右に動いた。回想の世界へと浸っているのだと分かる。二十年と言えば、悠真が生まれる前の話だ。悠真のこれまでの人生よりも昔の話。悠真が生まれる前から、柴や彼女は術士であったのだ。術士としての戦いの道で生き続けているのだ。回想の道で答えを見つけた、中年の女術士は口を開いた。

「二十年前、先代の紅様の暗殺計画があると、されたことがありました」

「先代の暗殺計画?そんな話聞いてもないし、襲撃もなかった。間違いない、その時、俺は紅城で惣爺に鍛えられていたのだから。惣爺らも、そのような話をしていなかった」

中年の女術士は言った。

「あくまで、噂です。私たち下緋は、民の近くにおります。民は、都での動きに敏感です。当然です。彼らの生活に直結しているのですから。そんな私たちが耳にした噂です」

柴は身を乗り出した。

「その噂の詳細を教えてくれ」

中年の女術士の困惑は深くなる。しかし、赤を与えられた術士「柴」と下緋の「彼女」では立場が違う。実力社会の術士の世界だからなのか、長い年月、術士として生きて生きた彼女の性癖に染みついているのか、中年の女術士は深い詮索をしなかった。柴に問い返すことは、失礼なことになるのかもしれない。そう思いつつ、悠真は柴に対して、敬語もつかわず、失礼極まりない言動で動いているが。きっと、大きさを持つ柴は、そんなことで怒りはしないのだろうが。


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