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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤い追跡者(12)

 柴は彼らが白の色神の一団だと口にすることはなかった。そして、彼らの中に赤の術士が紛れていることも教えなかった。余計な混乱を防ぐため、柴が選んだ方法なのだろう。

「分かった。それで、襲撃した術士の姿を見た者はいるのか?」

柴が中年の女術士に尋ねると、彼女は首を横に振った。

「残念ながら、そのような者はいないようです。突然襲撃されて、何が起こったのか理解できなかったとのことです」

柴はその言葉を聞くと大仰に頷いた。

「分かった、それでいい。残るはこちらで調べる。お前たちはこの事態の収拾を一番に考えてくれ」

柴が言うと、女術士は不信な表情を見せた。

「柴様、一体何が起こっているのですか?先の黒の異形の襲撃、破壊された官府、そして宿屋。私たちは下緋です。ですから、大した力を持ちあわせていません。紅様の御身に何かあったのではございませんか?このような事態、以前であれば赤の術士の方々が駆けつけておりました。きっと、朱将様や陽緋様が最も先に。そして柴様、あなたが火の国各地を巡っておられることは周知の事実。若い術士は柴様の顔は知らずとも、名は知っているものです。ですが、今、柴様が都へ戻り、陽緋様や朱将様の任を負っていらっしゃる。何かが起こったことは、私のような下緋でも想像がつきます。――年端のいかない若い下緋は別ですがね」

中年の女術士は、年の功を感じさせる口調で続けた。

「私は下緋として生きてきました。何よりも術士として、生きることを選んできました。ですから、分かるのです。術士としての歴は、柴様、あなたよりも長いのですから」

柴は苦笑した。それは、術士として大成を成し遂げたと思われる柴が見せるには珍しい表情だった。参った、というような完敗の表情だ。

「確かに、俺よりも長い年月、術士として戦ってくれていたもんな。――だが、不必要な情報は混乱を招くだけだ。世間では、そう考えない者もいるだろうが、俺はそう考える。だから、人に言ってくれるな。――俺が動いている。それが、全てだ」

そこまで言うと、柴は小さく頷いた。そして、まるで何かをひらめいたかのように大きく笑みを見せて言った。

「それで、術士になって何年になる?」

唐突な柴の問いに、中年の女術士は困惑していた。術士の世界では、年齢よりも実力が重視される。一見すると、柴よりも中年の女術士の方が立場が上のように思えるのに、現実は違う。先の陽緋として術士を束ねていた柴は、中年の女術士よりも遥かに上に立つ存在なのだ。

「問いを変える。二十年前、何をしていた?」

女術士は困惑していた。


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