表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
490/785

赤い追跡者(10)

 今、冬彦は姿を消している。消したが冬彦の意志なのか、攫われたのか分からない。だが、冬彦が優れた術士であることは事実なのだ。冬彦が対処できない敵が現れたのなら、それは火の国にとっても脅威だ。野江が敗れたのは奇襲だとして、冬彦が敗れたのは……。

 いや、と悠真は思考を止めた。冬彦が敗れたという確証はない。もしかしたら、敵に打ち勝ち、勝利の余韻に浸っているかもしれない。悠真は出来るだけ前向きに考えた。ただでさえ、野江が敗れたという現実が悠真の心に重くのしかかっているのだから。

 襲撃されたのは、都の奥にある宿場だった。雨など降っていないのに、辺りは水浸しだった。宿場の壁は崩れ、事態を収拾しようと術士が人払いをしていた。

「事態は紅様が把握している。お前たちはあっちに行け!」

下緋だろう。若い術士が舞風に乗る柴を追い払おうとした。しかし、柴は何の異論もしなかった。柴が先の紅であることも、加工師であることも、赤い羽織を持っていることも、彼は知らないのだ。

「この宿帳はどこにある?」

崩れた宿の一階、雨が降ったように濡れて水が滴り落ちている。

「出ていけと言っているだろ!」

若い下緋は叫んだ。すると、中年の女が騒ぎに気付き姿を見せ、はっと目を見開いた。

「柴様……」

中年の女も下緋だろう。彼女は深く柴に頭を下げ、若い術士の背中を叩いた。

「俺が術士だと、民に知られないようにしろ」

柴は舞風の背から降り、悠真もその後に続いた。若い術士は状況が理解できないようで、中年の女が小さな声で言った。

「先の陽緋様だよ。あんたが術士になる前のね」

若い術士は唖然としていた。

「黙って、人払いをしていてくれ。先の陽緋だとか、赤を許されているとか、民から知られると厄介だ。頼むぞ」

柴は短く言い、中年の女は深く頭を下げた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ