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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤い追跡者(6)

 イザベラがゆっくりと方向を変えた。そして、犬のような姿から翼が出現し、空へと飛び立った。その姿は、団子屋で悠真を襲った時のイザベラと似ている。柴が言ったから、黒の色神クロウがイザベラに命じたのだろう。柴が手拭いを広げて、丁寧に矢守結びで結ばれた草を包んだ。

「行くぞ」

柴は言い、舞風の背に跨った。そして大きな手を悠真に向けた。

 秋幸に背を押され、悠真は柴の手を掴んだ。肩が引き抜けそうなほど、強い力に引き上げられて悠真は舞風の背に乗った。舞風は不快そうに、一度後ろ脚を蹴りあげたが、すぐに落ち着いた。秋幸も身軽な動作で絹姫の背に跨った。

「どこへ行くのですか?」

秋幸が柴に尋ねていた。すると、柴は言った。

「相手が影の国と分かった。ならば、想像もつく」

柴は影の国に対して何かを知っている。それは事実だ。知っていることを隠したりしない。想像するなら、好きにしろ。そういう大きさが柴の中にはあった。

 柴が舞風の横腹に足で合図を送ると、舞風はゆっくりと歩きはじめ、徐々に歩足を速めていった。そして舞風が小走りになるころ、悠真は柴の大きな背中をじっと見つめていた。柴の中にある色と大きさは、なぜ生まれたのだろうか。かつて、義藤が言っていた。人には生きてきた道があって、その道が今を作っている。柴の大きさも、これまで柴が経験してきたこと、出会った人、生きてきた道から作られている。これほどまでに、他者を包み込む大きさは、なぜ生まれたのだろうか。悠真は、柴という人から、弱さを見いだせないのだ。


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