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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤い追跡者(1)

 森の中、悠真はイザベラと合流した。襲撃された野江。そして敗れたイザベラ。柴が苛立つ理由も分かる。森の中で、柴は難しい顔をしていた。先へ進むと決めたが、何をすれば良いのか分からないのだ。

「柴、今から何を?」

悠真が尋ねると同時に、柴は突然動き始めた。

「待っていろ、舞風」

言うと、柴はイザベラが囚われていた辺りの木々、そして草むらを調べ始めた。

「柴?」

悠真が尋ねると、柴は言った。

「敵はここで野江を襲撃した。偶然鉢合わせたのか?いいや、違う。鉢合わせたぐらいなら、野江が対処できる。正々堂々と戦って、野江が敗れるはずがないだろ。野江の力は本物だ。歴代最強の陽緋という称号は、美しき容姿に当てられたのではない。その力は、これまでの陽緋を凌駕すると思われるほど優れたものなのさ。野江の色の力を引き出す才は本物だ。その野江は赤と相性が良い。紅の石を持っている。それに、野江は訓練を受けている。惣爺と俺が野江を育てたんだ。野江は、女性でありながら臆することなく戦いに挑む。過酷な訓練にも耐え抜いた。野江は襲われたのさ。奴らが隠れていたのなら、どこかに痕跡が残されているはずだ。探せ、秋幸、悠真」

柴が言うから、悠真も草陰を見た。しかし、何を探すのか分からない。しかし、秋幸は何かしらの目的があったらしい。平凡な雰囲気を持つから、ついつい忘れがちだが、秋幸は非凡な才能を有しているのだ。

「これを見てください」

ふと秋幸の声が響いた。悠真には何か分からない。そこにあったのは、草を結んだ独特の結び目だった。誰かが暇つぶしにした。そんなものだ。

「ここに人が潜んでいた、それは間違いないでしょう」

秋幸が言い、柴は頷いた。

「そうだな、矢守結びか。時間つぶしにこれをするとは、高尚な奴がいるもんだ」

柴は言い、結ばれた草を拾った。その何気ないしぐさに、悠真は目を向けた。大きさを持つ柴は、いつも余裕がある。その柴がどこか焦った雰囲気をだしたのだ。

「どうした?柴」

悠真は柴に言った。柴が何かを隠したような気がしたのだ。そんな悠真の頭を柴が軽くたたいた。

「なんでもないさ」

明らかに、柴は何かを隠した。悠真は確信した。ただの勘だと言えば、それまでだが、悠真が見たのは色だ。時折見える、他者の一色。柴の持つ大きさのある赤が、僅かに揺らいだのだ。


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