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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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囚われの緋色(13)

男は手で字を書いた。もちろん、野江が読める字ではない。アグノという男はゆっくりと口を開いた。

「私は、あなたを助けます。傷を見せてください。安心してください。今のソルトに仕える前、私は医学博士として医学院で働いていました。事情あって、途中から実験体となりましたが、それまでに得た知識は雪の国の医療の真髄です。雪の国は最先端医療の国。お役に立てるはずです」

アグノは小箱から布を取り出すと自らの痛めた足を縛った。見れば、アグノの足からは血が流れている。

「なぜ、あたくしたちに協力を?」

野江が問うと、アグノは答えた。

「私たちが、赤の術士に助けられたからです。そして今も、助けられているのです。――私は、この命を冬彦に救われました。そして、今、彼はソルトを守っている。ソルトは紅に危害を加えるつもりはありません。もちろん、私も同様です。今回の狙いは間違いなくソルトでしょう。ですから、赤の術士と紅は巻き込まれたに過ぎない。申し訳ありませんでした。そして、都合の良い願いを聞いていただけませんか?ソルトを助けてください。私は、術士としては未熟です。ソルトを守るには、力が足りない」

アグノは俯いた。その言葉の理由がわかる。野江も紅のためならば、藁にもすがる。それに、冬彦が白の色神と一緒にいることに驚いた。冬彦は白との相性が良い。白の色神に連れ去られたか、脅されたかと、思っていたが、冬彦は冬彦の意志で白の色神と共にいる。冬彦との付き合いは短いが、冬彦が簡単に紅を裏切るような真似をしないことを野江は知っていた。そんなことをするほど、冬彦は愚かでない。

「それでも今、あたくしは動けないの。それでも、お役に立てるのかしら?」

野江が言うと、アグノは口を開いた。

「私を信じてください」

アグノが言うと、鶴巳は野江をゆっくりと下におろした。痺れた右手は感覚がなく、嫌な痛みだけを発していた。体が動かないのは、激しい眩暈のため。体を動かそうとすると、視界が暗くなり点滅するのだ。


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