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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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囚われの緋色(12)

 異邦人は何も言わずうなだれていた。しかし、うなだれながらも地下室を這うように移動し、敵の男が置いて行った木箱を開いた。その中身は、野江の位置からは見えない。すると、男は口を開いた。


「あなた方は、赤の術士ですか?赤の色神を守る術士ですか?」


その言葉に野江は息を呑んだ。そして、鶴巳の体に力が入るのを感じた。先ほどまで言葉が理解できなかった異邦人の言葉が、今は分かるのだ。

「なぜ?」

野江は尋ねた。すると、異邦人の男は言った。

「紫の石を二つ持っていたのです。一つは、奴らに奪われましたが、もう一つは着物に縫い付けていたので守られました。異国に足を踏み入れる以上、紫の石は命綱です。言葉の壁は心の壁。分かりあえるものも、分かりあえなくなります」

異邦人の男はゆっくりと続けた。

「先ほどは、紫の石を使用していなかったので、私には奴の声しか理解できませんでした。ですから、教えてください。お二人は、赤の術士ですか?――命は平等に扱われるべきです。ですが、私が守るべき命は一つ。その一人に害をなすのなら、私は手当てをすることが出来ません」

異邦人の言葉の意味は分かる。言いたいことも理解できる。野江も紅のためならば、他者を見捨てるだろう。それでいい。それでこそ、色神を守る術士だ。

「あたくしは、赤の術士。紅を守る術士よ。あなたは、白の術士ね」

野江は動かない体で動こうともがいた。異邦人が敵か味方か分からない。だからこそ、野江は警戒していたのだ。同じ術士であっても、味方とは限らないのだ。

「じっとしていてください」

異邦人は言った。

「私は、白の色神ソルトに仕える術士、あぐのです」

聞きなれない響きは、彼が異邦人だから当たり前だ。

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