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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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囚われの緋色(5)

だから野江は冷静だった。混乱することなく、事態を解決するため、状況を理解するために思考を巡らせた。目が開けば、何かが分かるのだろうが。

 まるで、今の野江は起きない体を起こそうと微睡むような、目覚めの悪い朝のような状況だった。目は覚めているのに、体が動かない。体が動かないのが苦しくて、もがこうとするが体は動かない。


 何かが起こった。


 なのに、何が起こったのか思い出せない。


 痛みが非常事態であることを野江に教え、野江の頭の中で警報が鳴り響いていた。心を乱されるほど不安な状態なのに、野江は落ち着いていた。それは、野江が何かしらの温もりに包まれているからだ。


 野江の脳裏に残像が浮かぶ。


――森。

――イザベラ。

――水。

――男。


 そう、野江は敗れたのだ。あの、正体不明の術士に敗れたのだ。野江は陽緋だ。火の国の術士の頂点に立つ。不意打ちとはいえ、その辺りの術士に容易く負けたりしない。野江は己の力を過大評価するつもりはない。しかし、己が敗れるということの意味が分からないほど、愚かでない。不意打ちとはいえ、野江に勝つ相手。その敵が火の国に牙をむけば、紅に危険が及ぶ。野江は理解している。今、佐久と冬彦が姿を消した。都南は佐久が姿を消したことに動揺し、己を失っている。己を失い。一人で行動している。術の力を失った都南は紫の石を持っていない。追跡することは難しい。黒の色神が都南を探し出してくれれば話は早いが、黒の色神が本調子でないことは明らかだ。赤丸はしばらく動けないだろう。それは義藤も同じこと。春市と千夏は優れた術士であるが、陽緋に匹敵するような術士でない。義藤らとは大きく差がある。隠れ術士の義兄弟で、術士として頂点に立つような力を持つのは秋幸と冬彦だ。野江が倒れれば、今、赤の術士で敵と戦えるのは、柴と、柴が連れている秋幸だ。悠真が前線で戦うには、未だ早すぎる。優れた術士が多いとされた、赤の術士がこの有様だ。


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