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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白の逃亡者(15)

――ソルト、あなたは大切な存在なのですよ。


白の声がソルトの中で響いた。


――だから、冬彦と一緒にお逃げなさい。


(何を言っているの?)

ソルトは白に言った。


――赤が騒いでいます。赤の術士の世界にも、何かがあったのでしょう。あなたが、ソルトが赤の色神に助けを乞うことは、赤の色神を戦乱に巻き込むことです。冬彦は今、赤の色神から距離を取っています。だから、冬彦と一緒にお逃げなさい。決して、命を諦めてはいけない。


白の姿は見えない。

(一体、敵は何なの?)

ソルトは白に尋ねた。白は色だ。この人の世の存在ではない。だからかもしれないが、時折、ソルトから距離を取る。ソルトは直感的に、それは人の世と色の世が別なものだからだと悟っていた。所詮、ソルトは白に選べばれて、色の力の一端を手にしたに過ぎないのだから。

 ソルトは何度も白に無理難題を押し付けた。赤の元へ走らせて、柴を救ったことを伝えるように命じたことも、その一つだ。色の世界には、ソルトの知りえないルールがあって、白は綱渡りをするようにソルトの手助けをしてくれているのかもしれない。

(分かっているの。――敵は、雪の国。私が雪の国から外に出たことをいいことに、私を殺そうとしているの。私が死ねば、新たな色神が立つのだから。白の色神は雪の国にとって神でしょ。神は、何もしなくていいの。そこに存在するだけで良いの。私は、動きすぎたのね)

ソルトは必要とされていない色神だ。疎ましいと思われている色神だ。


――あなたは、生きなくてはなりません。決して、命を落としてはならない。


白は強く続けた。


――医学院の悲劇を生み出したのは、私の責任です。それを繰り返さないために、あなたは生きなくてはなりません。普通、色神は多くの命を背負うものです。それは、赤の色神紅も、黒の色神クロウも同じです。そして、ソルト。あなたも多くの命を背負っているのです。だから、あなたは生きなくてはならないのです。


生きることが、これほどまでに大変だとは思わなかった。生きることは、これほどまでに大変なことなのだ。


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