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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白の逃亡者(14)


 ソルトが次に目覚めたのは、大きく体が揺れたからだ。そこでソルトは冬彦の背中から降ろされたのだ。そこは、古びた民家だった。屋敷というには寂れていた。しかし、広い庭に、枯れた池があり、穴の開いた土壁は、かつて繁栄を極めた貴族の屋敷のようであった。

「吉枝ばあちゃん、金持ちだったんだな」

冬彦が言うと、吉枝は苦笑した。

「これは、私が嫁いだ家だよ。旦那は有名な商家の一人息子でね、稼業に無関心なひとだったから、こんなことになってしまったのだよ。今は私一人。好きにお使い」

立てつけの悪い扉を開くと、色褪せた畳に廊下が続いていた。きれいに掃除はされているが、閑散として人気がない。

「新しい着物を出してあげるよ。少し古びているが、気にしないでおくれよ」

濡れている冬彦とソルトは玄関土間で待ち、その間に吉枝が中へと消えていった。なぜか、生き生きとしているように見えた。


「良い人ね、あの人」

ソルトは吉枝を見送りながら、冬彦に言った。玄関土間の上り口に腰掛け、見上げた冬彦は複雑な表情をしていた。

「良い人だよ。一度、家出をしたことがあって、そんな俺に飯を食わせてくれた。それからの知り合いだ。何をしているのか、何者なのか、知らなかったが、あの人の優しさは知っている」

冬彦が複雑な表情をしているのか、吉枝が優しい人だからだろう。だから、冬彦は吉枝に頼り、そして後悔をしている。その後悔を口には出さないが、表情で隠しきれない。その冬彦が微笑ましく暖かい。すべてはソルトの責任だ。ソルトを守るためにアグノが身を切り、そして冬彦を巻きこんだ。巻き込まれた冬彦は、ソルトを救うために吉枝を巻き込んだ。

 今、冬彦は何を思いここに立っているのか。ソルトを憎むのか、ソルトをけなすのか、ソルトを否定するのか、何を思い、何の理由でソルトを守っているのか。アグノに頼まれたからなのか、ソルトが白の色神だからなのか……。



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