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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白の逃亡者(10)

 都の道の人は、口々に騒いでいた。それは、異形の者の襲撃と日を明けずして、再び何か大きな力が起こったのだから当然だ。人の整理をしているのは、おそらく術士だろう。下級の術士だろう。赤を纏う様子はない。それでも、術士であるだけで人はその力を敬う。

「一体、何が起こったっていうんですか?」

「術士は何をしているんだ!」

都の民は混乱している。怒号が飛び交い、事実を求めようと民が術士に詰め寄っている。あれだけ穏やかで、あれだけ温かい火の国の民が混乱しているのだ。その罪はソルトにある。ソルトが火の国に足を運んだから、このような状態になったのだ。ソルトが火の国に来ることが、火の国を混乱に導く。

「陽緋様の姿が見えないぞ!こんな時でも、陽緋様は来て下さらないのか!」

「赤い色が見えない!」

「先の団子屋襲撃の際は、陽緋様と朱将が来たというのに、今回は……」

言いたいことが分かる。術士であるから、最後まで言わないだけだ。彼らは、下級の術士では不安なのだ。必要なのは、紅に重用されている術士だ。


「ごめんなさい」


ソルトは思わず口にした。赤の色神に、そして火の国の民に。火の国の民の温かさを知っているからこそ、ソルトは申し訳なく思うのだ。


「ソルトが悪いんじゃない。悪いのはソルトじゃない。色神の命を狙うなんて、間違っている」

言って冬彦は小さく笑った。

「とか言いつつ、俺も紅の命を狙ったんだけどね」

冬彦には白が似合う。混じりけのない白だ。汚れてなくて、まっすぐで、正直な白。ソルトは白は冷たい色だと思っていたが、冬彦を見て考えを改めた。白は、こんなにまで美しい。

「ありがとう」

ソルトは冬彦の背中に頬を当てて言った。

「はあ?」

困惑する冬彦にソルトは続けた。

「私、冬彦のおかげで白い色が好きになれたの」

ソルトが言うと、冬彦はさらに困惑した。

「白の色神が何言ってんだ?」

そう、ソルトは白の色神。なのに、白が嫌いだったのだ。雪のように冷たくて、雪のようにすべてを閉ざす。冬彦の白の一色が、冬彦は白の一色を持っているのに、こんなにまで温かい。

「良いの、それで。それで良いの」

ソルトは冬彦の背中の温もりを感じながら言った。


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