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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白の逃亡者(6)


 ソルトは白の色神だ。だが、代わりはいる。お前は必要とされていない。そう、言われたような気がした。必要とされていない。ならば、なぜソルトは生きているのだろうか。実験で使われたこの体で、自由の利かない体で、未来のない体で、必要とされないのに生きる意味はない。

「もう良いの」

ソルトは言った。必要とされていない色神に生きる理由はない。ソルトを一瞬のうちに絶望へと叩き落としたのは、異国の火の国で、強大な力を持つ術士に命を狙われたことだけでない。そのソルトのためにアグノが命を捨てようとしている。これまで、アグノは何度もソルトを救ってくれた。時に命を危険にさらして。だが、それは一瞬の出来事だった。今回のように考える時間がなく、今回のようにアグノを見捨てて逃げることではなかった。

「もう良いの」

ソルトは言った。ここでソルトが死ねば、アグノと冬彦は救われる。医学院はもう一度よみがえるだろうが、アグノと冬彦は助かる。ソルトは命を選んだのだ。医学院の実験体の命よりも、二人の命を選んだのだ。それが、白の色神の倫理に反する思いであっても、選択であっても、ソルトは選んだのだ。

「良くない」

言ったのはアグノだ。アグノの声は強い。

「ソルト、あなたは生きなくてはならない。二度と、医学院が復活しないように、あなたは生きなくてはならない。あの悲劇が起きないようにするために」

アグノは強い。

「ソルト、お眠りなさい。目が覚めているころには、すべてが終わっているでしょうから」

言われた直後、アグノの持つ紅の石が淡く輝いた。すると、ソルトの意識はそこで途切れてしまったのだ。


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