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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白の逃亡者(5)

 今、襲撃をしてきているのは術士だ。明らかに、敵だ。誰を狙ったのか。ソルトは考えた。考えるまでもない。冬彦を狙うのか。そんなはずはない。アグノを狙うのか。そんなはずはない。狙われているのはソルトだ。誰かがソルトの命を狙っているのだ。


――赤の色神?


誰が自らの命を狙っているのか、ソルトは考えた。考えてソルトの頭を過ったのは赤の色神の存在だ。ソルトが冬彦を拉致したと思い、助けに来たのか。

 そんなはずはない。赤の色神がソルトの命を狙っているのならば、敵は赤の術士のはずだ。なのに、紅の石の力を使う者がいない。それに、冬彦の命を奪うような攻撃をしては、本来の目的に反する。どこかで、ソルトは赤の色神を信じていた。冬彦が、心から信頼する人だ。悪い人のはずがない。ソルトは勝手は思いでそのように思っていたのだ。


――誰が一体……


冬彦は優れた術士だ。その力は術士として、一国の頂点に立つほどだ。例えば、火の国であれば陽緋のような存在。その冬彦を追い込むほどの敵だ。その敵が、なぜソルトを狙っているのか。なぜ、ソルトが火の国にいることを知っているのか。


 ソルトは白の色神だ。白の色神は命を救う色神。これまで雪の国で命を狙われた経験はない。ソルトは、他の色神よりも、崇高な存在なのだから。その白の色神であるソルトが、異国の地で命を狙われる。それも、強盗などチープなものでなく、術士が、何か大きな力が意志を持ってソルトの命を狙っているのだ。

 冬彦は優れた術士だが、確実に追い込まれていた。相手は複数なのかもしれない。そもそも、まだ子供の冬彦は、体力に欠ける。体力に欠けるということは、持久力に欠ける。

「冬彦」

アグノの声が響いた。アグノは破壊された畳の上に座っていた。足を痛め、立つことは叶わない。

「私が足止めします。ソルトを連れて逃げてください」

アグノは言った。

「私が足止めします。ですから……」

アグノは自らの石を取り出した。

「ふざけるなよ。俺は赤の術士だ。白の色神を守るのは、あんたの役目だろ!」

冬彦は叫ぶように言った。

「迷っている暇はありません。今、ソルトを救うことが出来るのは、冬彦だけなのです。ですから!私の願い、聞いてください。ソルトを狙う者から、ソルトを守ってください」

アグノはソルトを抱きしめる冬彦の腕をつかんだ。

「冬彦、頼みます」

そして、アグノは言った。

「ソルト、申し訳ありません。私があなたの元から離れることをお許しください」

この状況を打開する方法、それはアグノの言う方法しかない。


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