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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤い影への憧れ(17)

秋幸が赤影を望むのは、それなりの理由があってのことだ。簡単に物事を決める人じゃないから、人の判断に流されるような人じゃないから、秋幸の意志は固く、秋幸の決断は揺るがない。そして柴も動揺だ。大きさを持つ柴は、色を見ることに長けている。秋幸の色を見て、何かを思ったのだろう。だから秋幸を表の世界に引き留める。どちらの言葉も一理あるように思えて、悠真に意見することなど出来ない。

 じっと悠真たちは向かい合っていた。沈黙が覆っていたが、悠真は気にならなかった。柴と秋幸は牽制をしあっているのかもしれないが、悠真にはあまり関係ない。それでも、二人の妙な視線のやり取りが悠真は気持ち悪かった。だから悠真は口にした。

「浅間五郎って、どんな人だと思う?」

悠真はふと、尋ねた。浅間五郎。生きていれば、悠真の親ほどの年齢だ。一体、何をした人なのか、何をして命を落としたのか、なぜその死が先代紅の胸を痛めたのか、悠真には分からないのだ。

「術士ではないだろうな」

ふと、柴が口にした。

「術士ならば、多少なりとも名が残されているはずだ。その時、紅城にいた俺も名を知っているはずだ。なぜ、術士でない男と先代紅に交流があったのか、浅間五郎の死が先代紅の胸を痛める結果に至るのか、俺には検討もつかないのさ。先代は今の紅と違い、あまり剣術は得意でなかった。だから、先代紅の相棒は、先代の赤丸と言える。先代の紅と先代の赤丸しか知らないことが多すぎる。――俺だって、悔しいさ。当時は幼い子供だったとはいえ、俺は何も知らされていないんだから。それなのに、俺は胸を張っていた。表から紅を支えて、表の世界で紅のために戦えるのは、俺だけだと。真実、無力であるに違いないのに、俺は一人前のつもりだった。俺は、世間知らずな子供だったよ」

そこまで言って、柴はげらげらと笑った。

「一体、俺は何を言っているんだろうな」

げらげらと大きく笑う柴には余裕があった。自らの無知ささえ、自らの至らなささえ客観的にとらえる。その余裕が大人な証拠のように思えた。そして、柴はさらに笑った。笑い、ふと黙ったかと思うと、その目はしっかりと悠真をとらえていた。柴らしい強い目だ。都南のように獣のような強さはない。義藤のように刃物のような鋭さはない。けれども、柴にも一本の線がある。大きさを持つ柴らしい。

「悠真、お前は日に日に変わるな。いや、一刻、一刻だ」

悠真は理由が分からず、首を傾げて柴を見返した。

「お前の色は、一刻一刻と変わる。急激に変わる色は、お前の考えの深さを意味する。団子屋で会った時は、無鉄砲な小猿の勢いが残されていたが、今は穏やかな海のような広がりがある。それは、悠真の持つ色のためか、悠真自身が色の影響で急激に成長しているのか、俺には分からないが、悠真の色の変化はすさまじい。悠真、俺はお前にも言っているんだぞ。――無理に大人になるな」

悠真は柴を見返した。

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