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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤い影への憧れ(16)


 村瀬が去ると、柴はげらげらと笑った。

「ほら、俺にしか出来ない調べ方だろ。こんなこと、裏の世界の赤影に出来ないだろ」

柴は向きを変え、悠真たちに向かって笑った。

「確かに、これは赤影には出来ない行動でしょうね」

秋幸は苦笑していた。悠真は立ち去った村瀬と柴の関係に興味があった。柴は大きさを持つ人だ。知り合いが多くても不思議はない。

「それで、村瀬って何者なんだ?」

悠真が尋ねると、柴は苦笑した。

「村瀬とは、二十数年の付き合いだ。俺も生まれが複雑でな、戸籍を持っていなかったのさ。それを、先代紅と先代赤丸に拾われて、俺は術士として生きる道を手にした。当初、俺も赤影に配属される予定だったが、先代の時代は表の世界の術士も不足していてな、俺は表の世界の術士となったのさ。先代は俺の加工師としての力も見抜いていたらしい。そんなこんなで、俺を表に残したのさ。俺が表に残るに当たり、問題もある。それは、俺に戸籍がないことだ。だから、先代は信頼できる官吏――源三を通じて俺の戸籍を作った。その作業をしたのが、村瀬なのさ。今回、秋幸らの戸籍を作ったのも村瀬だろうな。そういう意味で、村瀬と俺は深い中なのさ。ことあるごとに、村瀬には迷惑をかけているからな」

柴は大きな笑みを浮かべた。そして、柴は再び秋幸に言った。

「秋幸、お前の戸籍は村瀬が作った。つまり、お前はもう、表の世界の住人なんだよ」

柴がどれほど秋幸を表の世界に引き留めたいのか、悠真は柴の言動すべてで感じていた。そして、驚いたのは、大きさを持つ柴も複雑な生まれということだ。もしかしたら、優れた術士は家族のいない者がなるのかもしれない、と思うほどだ。柴、秋幸、冬彦、そして同じような戸籍の無い生まれと言えば、義藤と赤丸も同じだ。そう思って悠真は考えを否定した。野江がいた。都南と佐久のことは知らないが、野江が戸籍の無い存在のはずがない。野江のすべてから、生まれの品の良さが分かる。

「どれだけ、俺を表の世界に残したいのか、それだけは分かりました」

秋幸はさらりと答えただけだった。

「お前は腹立たしいぐらいに融通が利かないな」

柴は大きなため息をついた。融通が利かないのは、柴も同じじゃないかと悠真は思ったが、その言葉を飲み込んだ。そして柴は悠真に言った。

「悠真、お前も言ってやれ。秋幸にな」

柴は悠真に無理難題を言い、悠真は首を横に振った。柴と秋幸の間に入るほど、悠真は勇敢でないのだ。

「俺が決めることじゃないだろ」

悠真は精一杯答えた。

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