表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
441/785

赤い影への憧れ(14)

 役所の中は人で混み合っていた。人の流れの中でも、柴は頭一つ抜け出ている。役所の看板の下に「戸籍証明」という札がかけられていて、柴はそこへと向かっていった。

「悪いが、浅間五郎という人を調べてもらいたい」

唐突に言った、柴の言葉に中年の役人は困惑していた。

「二十年ほど前に命を落とした男の名だ」

柴は言ったが、中年の役人は聞こえないふりをしているようであった。あからさまに、「さわらぬ神に祟りなし」状態だ。

「見ず知らずの者のために、調べることは出来ません」

中年の男は一つ答えて、再び書類に目を落とした。

「これは、紅様からの指令だ。悪いが、責任者を出してくれるか?」

柴は言うが、中年の役人は無視した。それは、役人として当然の判断だ。このような酔狂な者にいちいち取り合ってはいられないはずだ。すると、柴は突然大きな声を出した。


「聞こえますか!」


普段から大きな声の柴が、信じられないほど大きな声を出した。人で混み合った役所が静まり変えるほどだ。


「大きな声はご遠慮ください」


中年の役人が小声で柴に言った。

「いや、あなたの耳が遠いのかと思いましてね!」

柴の声は一層大きくなった。何かの騒ぎが起きたのかと思い、役人たちが裏でざわめき始めた。

「頼んでいること、聞いてもらえますか!」

半ば恐喝のような問いただしだ。人の視線が一斉に柴に集まる。それでも柴は動じない。動じないからこそ、柴の迫力が増すのだ。このような暴挙にでる男が、先代の紅を支えた実力者だとは、誰も思わないだろう。柴の大きさに惹かれていた悠真でさえ、驚くほどだ。秋幸は顔面蒼白で動きを固めている。

「あの!」

再度、柴が大きな声を出したとき、役所の奥から年老いた男が姿を見せた。どうやら、役所の管理人らしい。中年の役人を後ろへ下げると、柴の前に立った。難事に対し、上司がとり替わるのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ