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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤い影への憧れ(13)

 秋幸の優秀さは悠真も知っている。下村登一の乱で仲間になった四人の隠れ術士。春市、千夏、秋幸、冬彦の四人。その四人とも優れた術士であるに違いないが、その中で特に優れているのが秋幸と冬彦の二人。春市と千夏の二人は、野江らの下に配属された。しかし、秋幸と冬彦は違う。野江たちの期待が分かる。それだけ、優れた術士は一刻も早く必要なのだ。


 唐突に柴の声が響いた。舞風の背に乗る柴の大きな背中が発することだ。


「先代紅が俺に言った。無理に大人になるな、と。彼は……先代紅は、とても余裕がなかったはずだ。優れた術士はおらず、頼みの赤影も先々代の紅の暴挙で、力ある者は命を落としていた。なのに、先代は俺に言ったのさ。それが、彼の余裕。俺は、彼に憧れ続けているのさ」


 柴の大きさは、誰と比較することもできない。団子屋で、見ず知らずの悠真の危険を察知し、悠真の色と赤星の色を見ただけで状況を理解してしまうのだから。大きさは強さで、温かさだ。

(すごいな)

悠真は秋幸と一緒に絹姫にまたがり、そんなことを思った。柴は大きい。紛れもなく、先代紅を支えた男だ。そして、野江たち赤の術士を導いてきた存在だ。

「すごいな」

小さく秋幸が言った。それは、悠真と同じ言葉だった。


 役所の前につくと、柴は大きな体で身軽に馬から降りた。そして、舞風の手綱を近くの棒に括り付けた。先に下りた柴が悠真に手を貸してくれて、悠真は地に下りた。いまだに世界が揺れている感覚がするのは、今まで馬に乗っていたためだろう。船に乗った後に地に戻った時の間隔とよく似ている。秋幸も身軽な動作で馬から降りると、絹姫の手綱を杭に括り付けた。

「ほら、行くぞ」

柴は大きな動作で役所の中へ入っていった。


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