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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤い影への憧れ(10)

 馬の背に乗ると、世界が違って見えた。まるで、背の高い人に肩車をされているような感覚。幼いころ、祖父に肩車をしてもらったことを思い出した。

 紅城の門番が、不審そうな表情をしながら門扉を開き、朱塗りの門が開くと同時に二頭の馬が市街へと放たれた。市街は人で賑わっている。こえぞ、都の賑わいだ。黒の色神の暴走により、都には一時的に静けさの帳が下りていたが、今は賑わいを取り戻している。行きかう人は、馬を避け、珍しい白い馬に目を奪われていた。白い馬は絹姫だ。

 馬は一定の拍子で揺れる。上がって、下がって、前へ前へ。何ともいえない心地であった。二人乗りだから、座り心地は悪い。しかし、遠慮なく秋幸の腰に手をまわした悠真に落馬の恐怖は無かった。秋幸が確かに馬に乗れるからだろう。一定の拍子で揺れる馬の背で、秋幸は呟くように言った。

「悠真、悠真は黒の色神の乱の時、赤影と行動を共にしたんだろ」

唐突に、秋幸は口にした。先を行く柴には聞こえないほどの小さな声。体が密着しているから、悠真の体に振動で伝わってくる。

「はっきり言っておく。俺は、赤影に入る」

秋幸の決意は固い。柴がそれとなく話をずらしても、秋幸の決意は変わらない。きっと、秋幸は実現させるだろう。それが秋幸だから。

「赤影に忠藤がいるから?」

悠真が尋ねると、秋幸は低く答えた。

「それもあるけど、それだけじゃない。俺の生きる道は、ここにあると確信したんだ」

悠真はそんな秋幸に言った。

「俺は、反対だよ。赤影になるの、反対だから」

悠真は秋幸に言ったが、彼は何も言わなかった。絹姫は、一定の拍子で歩き続ける。前を進む柴の背中は大きい。唐突に秋幸は話題を変えた。

「柴はすごい術士だと思うよ。一人で陽緋と朱将を兼ねた実力は本物だと思う。彼の大きさは、力だし、彼が俺が赤影に入ることに意固地に反対するのは、俺が赤影に適していないからだと思う。けれども、俺は変らないよ。赤影に入ることを望み、赤影に入ることを否定的には考えていないよ」

秋幸も大概意志が強い。真に秋幸は強いから、決めたことは譲らないだろう。


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