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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤い影への憧れ(6)


――これが、一人で陽緋と朱将を兼ねた者の力。


――これが、先代紅を支えた術士の力。


悠真は柴を見た。柴という人は気安く接することが出来ると思えるほど、大きさを持つ。なのに、その実は計り知れない深さを持っているのだ。


 悠真たちは草履を履くと厩へと進んだ。

「悠真、お前馬に乗れるか?」

歩きながら、柴が悠真に尋ね、悠真は一つ息を呑んだ。忘れてはならない。悠真は田舎の小猿だ。馬は裕福な者しか持っていない。農業を営む農民であれば、馬を使って田畑を耕すこともあろうが、悠真は漁師だ。馬とは無縁の関係だ。幼いころ、行商人の馬に乗せてもらい、落馬したという苦い経験しか思い出されない。

「俺が一緒に乗ります」

秋幸が平然と言った。山育ちの秋幸が馬に乗れるはずがない、と悠真は思い込んでいたのだが、秋幸は馬に乗れると言ったのだ。

「秋幸、馬に乗れるのか?」

悠真が尋ねると、秋幸は笑った。

「当然だろ。馬に乗れるよう、それなりの訓練は受けたんだから」

悠真は、秋幸に負けたような気がして、少し悔しかった。

 厩では、厩番が仕事をしていた。紅城で育てられる馬は多い。優れた術士は各自専用の馬を持ち、普通の術士用にその他の馬もいる。厩番は、馬の世話だけでなく調教を請け負う。馬の体は動かさなくてはすぐに鈍ってしまうのだから。厩番は夜間の当直もある。紅城に足を運び、紅城の中を散策していた悠真は、もちろん秋幸と共に厩にも来たのだから。ただ、悠真は馬に乗れないから見るだけだ。秋幸が乗っているところを当然見たことない。

「お疲れだな」

柴は厩番に片手をあげた。夏が近づいているから、数頭の馬が洗い場に出され体を洗われていた。若い厩番は柴の姿を見て困惑していた。彼は悠真と秋幸が馬を見るのを許してくれた、気安い人だ。困惑した厩番を見て、首をかしげていた。もしかしたら、柴のことを知らないのかもしれない。しかし、そこへ現れた中年の厩番が慌てて若い厩番の頭を下げさせた。

「柴様、いつお帰りで?」

ああそうか、と悠真は納得した。柴はあまり紅城に立ち寄らない。柴と面識のない者は多い。もちろん、かつて柴が陽緋と朱将を兼ねていた時代から紅城に仕えていた者は別であるが。


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