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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤い影への憧れ(3)

 悠真は、秋幸に目を向けた。秋幸は柴をどのように思っているのか興味があったのだ。柴の色は大きく広がりを持っている。その色だけで、柴が信用に足る人物だと分かる。悠真は柴の色を見て、柴も悠真の色を見ている。悠真の人となりは柴に筒抜けなのだ。そして、秋幸の色を柴は見ている。悠真が一色を見るのは、たまにの話だ。悠真の力は不安定なのだから。しかし、柴は違う。柴は常に色を見続ける。紅と同様に、一色を見ることが出来るのだ。まるで、心を見られているようで、あまり気持ちの良いものではない。

 秋幸は何とも言えない顔色をしていた。奮い立つような、表情をし、そして言い放った。

「赤影ですか?」

秋幸の、その真っ直ぐな目は天井に向けられている。

「俺を、赤影に入れてください」

大きな声でない、秋幸のその声は不思議と響いた。悠真は思わず秋幸を見つめた。何が起こったのか、理解できなかったのだ。

「秋幸、お前……」

柴の唸るような声が響いた。それでも、秋幸は再び言った。

「俺を、赤影に入れてください」

秋幸の声は動じない。まっすぐに、ためらいなく言い放たれる。

「秋幸!」

大きさを持つ柴が声を荒げた。柴は怒っている。それでも、秋幸は変らない。頑として、曲げようとしない。それは、下村登一の乱の時、迷うことなく惣次の石を使い自らを犠牲にした時の姿を思い出させた。秋幸は、賢い。そして時として、誰もが予想しない行動をとるのだ。信念があるから、決して曲げないその意思は、周囲を驚愕させる。

「俺は、紅によって生かされました。その前に、忠藤によって救われました。俺の命は紅と忠藤によって生かされている。俺は忠藤に恩がある。それだけじゃない。俺の目標は忠藤なんだ。だから、俺は赤影になる。忠藤が赤丸ならば、俺は、赤影になる」

秋幸は揺るがない。それが秋幸だ。悠真はどこかでそれを知っていた。命がけで惣次の石を使った時から、悠真は知っていたのだ。


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