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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色を守るからくり師(16)

――鶴蔵は、朝霧を乗りこなしているか?

野江は紅が連絡を取ってきた意図が分からず、戸惑いながら答えた。

「大丈夫なようよ」

――やっぱりな。鶴蔵は、ああ見えて、結構、身体能力が高いだろ。私の前じゃ絶対に見せたりしない。遠爺が黒の色神に頼まれて、野江を見送るというから、ついでに頼んで正解だったな。

紅は紫の石の向こうで、けらけらと笑っていた。紅は笑い声まで紫の石で届けてくる。出会った時は、右も左も分からない子供だったのに、今や平然と野江に指示を出す。

「それを確認するために、あたくしに連絡を取ったのかしら?」

野江は紅に尋ねた。紅のすることは、時折、野江の考えを超越する。正直、ついていけないのだ。

――最近、何かと慌ただしくて、野江と膝を合わせて話をする時間がなかったから。

ふと、響いた紅の言葉に、野江は息を呑んだ。紅が唐突にそんな言葉を口にするからだ。

「あたくしと?」

答えると、紅は紫の石の向こうで小さく笑っていた。

――時々、こんな私でも不安になる。

「え?」

さらに唐突な紅の言葉に野江は戸惑いを隠せなかった。

――慌ただしくて、話が出来なかっただろ。あの、紅の間での後に。あの時、都南も義藤も混乱していた。野江だけが冷静だったから、礼を言わなくちゃいけないと思っていたんだ。

野江は何と言って分からなかった。あの時、野江は本当に冷静だったのか、断言などできない。都南が荒れていたことは事実だが、義藤がそうとは思えなかった。

――黒の色神クロウが言っていた。白の色神は幼い娘だと。けれども、優れた色神であることに間違いはないだろう。あの年齢で大国雪の国を総べるんだ。その白の色神が柴を救った。何かを考えてのことだ。何を思っているのか、諜報が得意なクロウでも分からないらしい。もちろん、私も分からない。不気味なんだ。

野江は何と言っていいのか分からなかった。その中で、紅は少し間をおいて続けた。

――私がこれまで、さまざまな点で無茶をしてこられたのは、絶対的に信頼できる仲間がいたからだ。けれども、私は何も知らない。佐久が姿を消して痛感したのさ。私は何も知らないんだ。佐久だけじゃない。都南や野江、鶴蔵のことも何も知らない。当然かもしれない。元をたどれば、野江たちは先代の紅に仕えた術士だ。私が先代から横取りした術士だ。


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