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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色を守るからくり師(15)


 野江は浮雲の鬣を掴むと、鐙に足をかけて一息で浮雲の背に乗った。浮雲は小さく首を振ったが、それ以上暴れなかった。元来、大人しい馬だ。鶴巳も、見た目に反した身軽な動きで朝霧の背に乗った。しかし、朝霧は後ろ脚を上げて暴れた。

「いい加減にしろ、朝霧」

鶴巳は手綱を引いて大勢を立て直しながら、朝霧の脇腹を蹴った。心なしか、朝霧の暴れる動きが小さくなったように思えた。浮雲の脇腹をければ、浮雲はゆっくりと歩き始める。森の中は足場が悪い。歩かせるだけで十分だろう。


 次に向かうのは、赤影の隠れ小屋だ。向かったところで何があるのか、野江には分からないのが、正直なところであるのだが。


――野江。


ふと、響く声に野江は天を見上げた。野江の前にイザベラが走り、野江の後ろに朝霧を歩かせる鶴巳がいる。しかし、その声はイザベラのものでも、鶴巳のものでもない。野江が命を賭してでも守りたいと願う、彼女の声であった。

「紅、どうかしたのかしら?」

野江は浮雲を歩かせたまま答えた、紫の石を使い、紅が野江に呼びかけているのだ。赤の色神である紅は、当然のように紫の石との相性が悪い。使うには、相応の消耗をする。けれども、紫の石は術士と紅を繋ぐ架け橋だ。鎖国をしている火の国にとって、紫の石は貴重な石だ。その石を、割符のように半分に割り、紅と術士はつながりを持つ。野江を通じて、術士どうしもつながることが出来る。末端の術士に届かずとも、野江ら中枢の術士には届く。紅の声は常に野江たちに届き、野江たちは常に紅から守られている。一人で戦っているのではない。そう、感じさせてくれるのだ。


――今、どこにいる?


紅は必要以外連絡を取ってくることはない。それは、紫の石を使う負担もあるが、貴重な紫の石の消耗を防ぐ意味もある。まるで、世間話のような出だしに、野江は戸惑った。

「赤影の隠れ小屋に向かっている途中よ」

すると、紫の石の向こうで紅が小さく笑っていた。鶴巳は朝霧を乗りこなすのに苦戦して、野江と少し距離が空いていた。だから、野江と紅が紫の石で話をしていることに気付いていない。


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