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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色を守るからくり師(13)

 二年前の恐怖が常に野江の中にある。都南と佐久が大きすぎる代償を支払った時の恐怖が野江の中にある。あの時、野江は無力な陽緋だった。野江を守り、命を落とした赤影もいる。野江は、義藤が当時のことを振り返り、悩んでいることを知っている。だから、義藤は努力を続けているのだろう。諦めることなく、力を欲し続けている。それは、野江も同じだ。

 野江は術士でなくては生きていけない。佐久や都南のように、力を失った後に生きていくことが出来るのだろうか。術士は危険な仕事だ。戦いを余儀なくされて、命を落とすこともある。人を殺すこともある。命を落とすなら良い。しかし、力を失えばどうなるのだろうか。戦いで深手を負い、白の石で命を繋いだところで、力を失ってしまえば、それは死と同じだ。野江には、術士であることへの強い固執があり、力を失うことへの強い不安があった。術士の力を失った後も、生きる価値を見つけ出したいのだ。

「人には皆、生きる理由がございやす。こんな、あっしにも、からくりを作ることができやした。葉乃にも薬師としての理由がございやした。きっと、生きる人すべてに生きる理由があるのでございやしょう。子を守る母、友を思う者、物を売る者、作る者、社会の流れに人は組み込まれ、それは、からくりの部品のようなものでございやす。どれほど精巧なからくりであっても、小さな歯車一つかけるだけで動きやせん。誰しもが、必要な者でございやす。野江もあっしも、歯車の一つでございやす。もちろん、この朝霧も。野江もあっしも、朝霧も、必要とされているのでございやすよ」

鶴巳の言葉は温かい。まるで、野江の不安を全て感じ取っているようであった。朝霧が納得できないというように、鼻を鳴らしていた。鶴巳は野江の最も近くにいる存在だ。術士の才を見出される前から、野江を守ってくれていた。野江の近くにいてくれた。それだけが、野江の安心であった。


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