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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色を守るからくり師(10)

 野江は思い出した。野江が初めて馬に乗ったのは、鶴巳が操る馬だった。鶴巳の背にしがみつき、野江は馬で草原をかけた。初めて感じる風、初めて感じる草の匂い、馬の揺れ、太陽の光、すべてが鮮明に思い出される。あの時も、鶴巳は馬を操ることに長けていた。

――あっしは、小作農家の息子でございやした。馬は、耕作のために必要な仲間でございやす。

鶴巳が語った言葉を、野江は覚えている。あまり過去を語らない鶴巳が、珍しく語った過去なのだから。


 野江も浮雲にまたがった。鐙に足をかけ、一息で馬の背に乗る。これだけのことが出来るようになるまで、随分と努力したものだ。

「白の色神は、柴を救ったのでしょう?ならば、あたくしたちは、そこに向かうまでよ。あの、赤影の隠れ小屋まで行くのよ」

野江が言うと、クロウが残したイザベラが身を震わせた。そして野江は浮雲の脇腹を蹴ると馬を進めた。その後を追うように、イザベラが走り始め、鶴巳が手こずりながら朝霧を走らせた。

 市街地の中、野江は浮雲を走らせた。馬の一定の揺れを感じて、腿の内側に力を入れて体を安定させる。馬の首は上がり、野江に従順さを見せている。振り返ると、イザベラが犬らしい走りで馬を追いかけている。さらに後ろで、鶴巳が朝霧を走らせている。朝霧は首を左右に振ったり、上下に振ったりして明らかに苛立っている。走る速さも一定しない。朝霧を御するのは、難しい。それでも、鶴巳ならばなんとかしてくれるだろう、と思えるのだ。

市街地を抜けて、都の先にある森へと入っていく。馬は疲れを知らないように駆け抜け、町影は小さくなっていく。民家が減り、木々がうっそうと生い茂る森の中に馬は躊躇いもなく入っていった。川に沿って森へ入ることで、迷わず森へと進むことが出来る。鶴巳を乗せる朝霧は、いまだに鶴巳に反して暴れている。馬に対しては強気な鶴巳は、遠慮なく手綱を引き、朝霧の頭を引き上げ、止まろうとする朝霧の脇腹を蹴ることで前に進めていた。イザベラについては言うまでもない。息が上がることもない異形の者は、平然と駆け抜けている。

「鶴巳、大丈夫なの?」

野江は振り返り、鶴巳を見た。暴れる朝霧を必死に御する鶴巳がそこにいた。

「大丈夫」

鶴巳は短く言った。必死なのが分かる。なぜ、遠次は鶴巳に朝霧に乗るように指示したのか、野江には理解できなかった。鶴巳は術士でない。からくり師なのだ。


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